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知的障害者福祉研究報告書
平成7年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第3章 国内調査

1. わが国の地域生活援助の実践

地域住居・作業所等の見学―1 No.1

地域住居・作業所等の見学―1

◇見学日/平成7月10月4日(水)15:00〜17:00 引率:小林寮長「旭寮」

◇見学先



■『ワークセンターえるむ』



[概要]

○「伊達市手をつなぐ親の会」によって伊達市で初めて開設された地域共同作業所である。
○重度障害者多数雇用事業所であるモデル工場((株)ポニー製菓)から業務の委託を受けている。
○作業時間は午前9時から午後4時まで。
○同じ建物の2階には、太陽の園の入所施設に在籍する方の地域生活実習ホームがある。またその向かいの建物は1階が国認可のグループホーム、2階は「旭寮家族の会」が運営するケア付きホームである。

(説明:小林寮長「旭寮」)

◇作業風景



◇外観:手前の建物1階が「ワークセンターえるむ」
2階は生活実習ホーム「ヴィラ平本D1号」
その向かいの建物1階がグループホーム「平本ホーム」
2階はケア付きホーム「平本ホーム2号」



■『ヴィラ平本D1号』



[概要]

○この住居に入居しているのは、太陽の園の入所施設に在籍している方たちである。
○地域生活へ移行できるように、この地域住居を拠点として生活実習を行っている。
○居室は3部屋(各6畳)を2人ずつで利用している。
○太陽の園の職員が「遅勤」という形で夜間に来て、お金の管理や身の回りのことを助けている。
○昼間の活動場所は1人の方は同じ建物の1階にある「ワークセンターえるむ」(地域共同作業所)、あとの方は太陽の園の作業科へ通っている。
○入居者の方の昼の活動内容例
・太陽の園のクリーニング科で園内の人のシーツ等の洗濯をしている。
・ひまわり学園(太陽の園の児童施設)で、洗濯や食器洗いのお手伝いをしている。
・太陽の園の重度の人の入所更生施設でお手伝いをしている。
○太陽の園へは学園バスで通っている。バス停はここから5分程度のところにある。

(説明:佐々木氏「太陽の園 希望ヶ丘学園」)

◇夕食の下ごしらえをする実習生の方たち



■『平本ホーム2号』



[概要]

○居間などの共用部分を小さくして、それぞれの個別の部屋を大きくした。
○テレビなどは各部屋のものを個人で見て、だれかと話したいときに居間にでてくるという形態になっている。だから居間にはテレビは置かれていない。
○ここを利用している人の中には一時期アパートで1人で生活していた人もいる。その人達は結婚の機を逃して、ずっと1人で暮らしてきたのだが、やはり寂しくもあり、それなら仲間と暮らした方がよいということでここへ移ってきた。
○1階には同じ造りのグループホームがあるが、これは国の認可を受けているものである。このことで造りは同じであっても、1階と2階では入居者の負担が違うともう状況がある。

(説明:小林寮長「旭寮」)

◇「平本ホーム2号」リビング



■『グループホームたんぽぽ』



[概要]

○仕事から帰ってからは、居間で話しているのが好きな人や部屋で落ちつきたい人など過ごし方はそれぞれである。
○個性の強い人の集まりで、食事の支度より人間関係の問題の方がたいへんである。
○食事の献立はお店に行って、その日の材料の善し悪しを見てから決めている。
○一月の生活費は家賃30,000円の他、食費が25,000円、共益費が10,000円。
○家賃、食費、共益費等以外の生活費は、各自が作成した予定表に基づいて援助センターからおりてくるが、金銭の管理は、自分でできる人とできない人がいる。できない人については世話人さんが金庫に保管して必要な都度渡している。
○2階の自立アパートに入居している方の生活に対しては、なるべく干渉しないようにしている。
○河野さん以外の世話人さんはいないので健康には気を使っている。休んでも2日程度である。
(説明:河野さん(世話人))

※世話人の勤務形態について
○スウェーデンでは世話人の勤務形態について非常に割り切っており、ローテーションで勤務している。
日本では「家庭的」ということを非常に大事にしている。
スウェーデンでグループホームがやりやすいのは、食事の要因もある。
スウェーデンでは温食が少ないのに対して、日本では温食にこだわりを持っている。

(説明:小林寮長「旭寮」)

◇「グループホームたんぽぽ」リビング(右は世話人の河野さん)



◇外観:1階が「グループホームたんぽぽ」 2階は自立アパート「ハヤセハイツ」



■『グループホームいしずえ』



[概要]

○世話人である川越さんには、重度の知的障害を持つ娘さんがいらっしゃる。(現在は太陽の園の入所施設を利用している)
娘さんの年齢は今20代であるが、将来はこのようなグループホームで生活させてあげたいと思ってこのホームを始めた。
○この「いしずえ」は、川越さんの自宅でもあることから、川越さんが入居者の方と離れることは、個人的な用事がある時以外にはない。
それでも川越さんが少しでも外出すると、その間入居者の方は不安を感じる。
○世話人とは本来、親とは違うものだと思うが、同じように「いつもいて当たり前」という感じになっている。重い障害を持つ人と同居するということは難しい面がたくさんあると感じている。
○世話人としての仕事がたいへんとか、みんなと一緒にいることがたいへんということではなく、障害を持つ人たちの思い、つまり「ずっと一緒にいて当たり前、全てして貰って当たり前」ということが生活の中で身に付いてしまっていることへの対応が難しい。
○施設にいた時は職員に対してあきらめていたことを、ここなら、わがままを言えば聞いてくれるのではないかというところがある。
○施設的なやり方がよいのか、家庭的なやり方がよいのか、気持ちとしては揺れ動いている。
○このような形態のグループホームが、どんどん増えていって欲しいと思って始めたが、なかなかあとには続いていない。自分が続けていけなくなったときに、今入居している人たちはどうなるのかという漠然とした不安はある。
○本人たちは、施設にも家族のところへも帰りたがらない。かえって連体近くになるとパニックが起きたりする。
○行事に参加したり、買い物に行ったり、外出するのは、やはり施設よりグループホームの方がずっと自由で柔軟である。
○障害の重い人が地域で生活するには、やはり同居でないと無理だと感じている。だれかが常にいて、何かあったときにすぐに対応できる形態が必要だと思う。
○昼の活動としては、太陽の園の授産施設に通っている方と太陽の園の敷地内にある地域共同作業所に通っている方がいる。
(説明:川越さん(世話人))

◇グループホームいしずえ 外観



◇リビング



◇部屋でくつろぐ入居者の方




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