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知的障害者福祉研究報告書
平成5年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


施設見学・ヒヤリング記録

武蔵野障害者総合センター デイセンター山びこ見学記録

社会福祉法人 武蔵野障害者総合センター デイセンター山びこ(精神薄弱者更正施設(通所)〜柴田洋弥氏〜 No.1

同行者 (株)福祉開発研究所:宮森、小松、金子
場 所 東京都武蔵野市吉祥寺北町

知的障害-軽度の人
○ソフトが中心である。
○通勤寮でも、重要なのは社会生活機能を獲得する施設であることである。
現在の通勤寮は、規模は最低20人、4人部屋である。それでは集団生活であり、自立訓練にならない。個室で数名規模でなければ意味がない。それには職員配置の問題があり、単独設置は難しい。複合型でやればよい。
○実際の生活地域に作る必要がある。(20人規模では広域募集しないと成り立たない。)通勤寮の近くに就職することになるので、広域募集ではその人の持っていた地域性がはぎ取られる。

知的障害−(軽度〜)中度の人
○家庭からグループホームにはいる前に生活技能を身につける施設(体験ホーム)が必要である。
地域の中に小さいものがたくさん必要となる。武蔵野の人が武蔵野のグループホームに入り、就労するのが望ましい。通勤は1時間以内で乗り換えが少なく行けるところが条件となり、通勤圏は限定される。人口規模20万人くらいが限界である。

知的障害−重度の人
○訓練を受けて次に移ることは不可能。そのままそこにいることができるところが必要である。
○スウェーデンでは重度もグループホームで多数の職員によってやっているが、日本でできるかは疑問である。
"山びこ"は、通所で、2:1の職員数でやっていて手一杯である。グループホームなら利用者1人に対してスタッフが2〜3人必要。その費用を誰が出すのか。
老人福祉と横並びということで考えれば、10年先を考えても、それだけの税負担、税率アップはできない。税金による高い社会保障は、国民の連帯意識に基づくものであり、日本ではそこまで行かない。アメリカでは、そのような国民の連帯意識がなく、税金による社会保障はできないので、自己負担になっている。

施設配置と人口規模
○グループホームと通所施設の違いは、夜間(深夜体制)の有無である。
規模が大きいほどコストは下がり、スタッフは楽になる。現実にどの程度小規模にできるかが課題である。
○国立市(人口6万5000人)では、40人の重度心身・知的障害者施設があるがいっぱいにならない。
武蔵野市(人口13万人−ただし流動人口が多く固定人口は10万人くらいか)では、"山びこ(重度通所)"は、現在22人でもう少し経つと30〜40人である。今後多めに見ても70〜80人分あれば十分である。20人規模の施設を2〜3カ所作ればよい。

○平均して10万人くらいの規模がいいのでは。
親元から施設まで1時間以内の範囲がよい。地方ならより広域になるが、10万人でおおよそ1経済圏で、車移動なのでやはり1時間圏内とみてよいであろう。
10万人規模内で、軽度〜重度までをすべて持つ、入所・通所をその範囲に配置する、という形が望ましい。

入所施設について
○入所施設全廃論には反対である。現時点では入所施設は必要である。
地域の中に小規模の入所施設が必要。また、20世紀初頭までは、重度の入所施設は必要である。
○グループホーム的にやるのがよい。全員個室で5〜6人のホーム、それを4つくらいつないで1つの施設とする。夜は一緒でも、昼間はグループで行動し、近くの通所施設等へ通う。
1人が入所と通所の2施設を利用することは法的に不可だが、一施設であるということにすればよい。一筆でなくても、同一敷地内でなくても、多少離れていても、一施設と称することは可能である。
○親はできれば家庭で頑張りたいと思っている。障害児者が親や家族の生き甲斐になっている。
親とすっかり離してしまうのではなく、親元と入所施設を行き来して両方で泊まり、作業所も親元からも入所施設からも同じ所へ通えるようにする。慣れた場所・慣れた人であることが大切であるので、入所施設の方もいつも同じ部屋で、親元の自分の部屋と同じ環境にしておく。そのような場所を確保しておけば、親に何かあったときの緊急入所や、親が亡くなったあと自然に入所施設の方に移行することができる。

デイセンター山びこの紹介

◎山びこは…
○重い知的障害をもち、作業中心の活動がむずかしい人への援助を行う通所施設です。
○武蔵野障害者総合センター内では、最も重い障害をもつ人たちの地域生活を支える役割を担います。
○利用者ができる限り自ら主体的に選択・決定し、さまざまな活動を通して社会参加・自己実現を図ることめざします。

◎援助の考え方
○利用者の人としての尊厳とプライドを尊重し、利用者が安心できる場、楽しく通える場、主体的に参加できる場を形成します。
○利用者個々人の障害や特性に応じて、できるだけ個別化した活動計画により援助します。
○活動については、利用者個々人の意思や希望を尊重し、文化的な生活が豊かに保障され、個性が輝くような多様な内容と機会を準備します。
○利用者が個々人の状態に応じて様々な援助システムを有効に活用し、地域社会で安心して生活できるよう支えます。
○社会生活技能の修得指導や身体機能の訓練なども行いますが、その場合は特定の目標・利用者・期間・時間などを限定し、本人・家族の合意の上で実施します。
○共同援助者としての家族との連携を図ります。

◎利用者のようす
○男性10名、女性12名、計22名。  
○年齢 18歳〜31歳 平均21歳。
○愛の手帳 1度(最重度)1名、2度(重度)20名、3度(中度)1名。
○身体障害者手帳 肢体不自由:1級2名、2級2名、5級1名。 視覚障害:1級1名。
○合併症 自閉症11名。てんかん12名。

◎グループの特長
○Aグループ 重い身体障害を併せもつ人や、ゆっくりしたリズムの人たち。
○Bグループ 難病などがあり、ゆっくりリズムで、仲間どうしの関係が大事な人たち。
○Cグループ 自閉症をもち、活発で、個別の活動が大事な人たち。

◎1日の活動時間
8:30〜10:00 職員ミーティング、送迎、活動準備、利用者個別活動
10:00〜15:00 グループ別に活動
15:00〜17:15 利用者個別活動、送迎、職員休憩、職員ミーティング

○活動は一人ひとりの利用者の状況によって、できるだけ個別に計画します。
○個々の利用者が主体性を確立し自信をもてるように、活動時間内に複数の活動内容から選択できること、活動の時間配分についても選択できることを原則とします。
○利用者がよりよく意思表現できるように表現方法を工夫します。表現や自己選択の困難な利用者については、その表情等から、最も適した活動内容を職員が選びます。
○室内活動の内容
Agr:織物・和紙すき・和紙染め・紙粘土・料理・マット運動・レク・他
Bgr:織物・和紙すき・シルク印刷・料理・絵画・音楽・レク・他
Cgr:織物・加工作業・シルク印刷・料理・レク・他
○外出(半日外出・一日外出)の内容
Agr:野外レク・散歩・社会見学・レジャー施設・ドライブ・買物・外食・他
Bgr:野外レク・散歩・社会見学・レジャー施設・バス電車・買物・外食・他
Cgr:野外レク・散歩・社会見学・レジャー施設・バス電車・買物・外食・ハイキング





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