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第1章 総論

 

1.1 研究開発の背景と目的

 

近年の港湾は、船舶の大型化と後背地の活用を図るために、広大な港湾水面の必要性と、外海に面した立地条件のもとに造成されることが多くなってきている。このような港湾は大規模な防波堤によって港内静穏度を保つように計画されているが、防波堤開口部からの外洋波浪の進入は十分に抑えきれていない。特に周期十数秒から数分の長周期波成分は、たとえ波高が小さくとも港内の係留船舶に大きな動揺を発生させることがあり、現実に各地で船体動揺の発生とそれによる荷役障害が大きな問題となっている。

しかしこれらの長周期波の実態および船体動揺に及ぼす影響については、全国的な規模で統一的に解析・検討されてはいない。

一方当センターでは運輸省港湾局と気象庁による全国62ヶ所の波浪情報を詳細な波形データのレベルで保有しており、これらの波形データに適切な処理を施すことにより、問題となっている周期帯の長周期波成分を抽出することが可能である。

さらにこれらの長周期波が港湾に進入した際に係留船舶の動揺にどのような影響を与えているかをアンケート及び現地ヒヤリング調査によって検討することにより、長周期波によって船体動揺が発生している実態を明らかにすることができる。さらに将来的には気象予測情報から長周期波浪を予測する手法を検討することにより、波浪予測情報と連動した船体動揺を予測する手法を得ることも可能である。

これらの研究を行うことにより、港湾の安全な管理や船舶の安全な係留に対して重要な成果を提供することができる。

 

1.2 研究開発の概要

 

この研究は平成9年度の単年度で実施したものであり、その概要を以下に述べる。

 

1)長周期波に関する最近の研究成果、研究論文の調査

 

特に港湾内の船体動揺に与える影響に注目しながら、長周期波に関する国内、国外の最近の研究成果、研究論文を収集し、長周期波に関して得られている最近の知見をとりまとめる。

 

2)長周期波による船体動揺の実態調査

 

日本国内の港湾における長周期波による船体動揺の発生状況の実態についてアンケート調査を行い、さらにこれらの港湾の中で長周期波が問題となっている代表的な港湾について現地ヒヤリング調査を行うことにより、長周期波による船体動揺の実態を明らかにする。

 

3)全国港湾海洋波浪情報網(ナウファス)による日本沿岸域の長周期波の出現状況の解析

 

日本沿岸では運輸省港湾局による全国港湾海洋波浪情報網(ナウファス:全国51

 

 

 

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