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て、病院はそれでもうかる。家族はまあまあ楽だ。しかし、これからは厚生省も大変でしょうし、なるべく寝かせないで歩かせよう。ということになると、それに堪えられるまちでなければならない。ということになれば、やはり低床式がいいのではないか。こんなふうに思いました。先ほどから言っておりますように、差別をしない社会が絶対に必要だ、損得関係なしにそう思ったわけです。

先ほどから企業経営だから収支を合わせなければならないというお話がいろいろございました。ごもっともです。私どものバス会社は何とか黒字でやっています。どういう考えでやっているかというと、原価がいくらかかるからいくらでなければならないという考えでやっているのではないんです。値ごろ感はいくらかなということだと思います。

例えばしょうゆは原価いくらだから、これは600円でなければだめだよということで、スーパーで1リッター600円で売ったとします。だれも買ってくれない。ただ置いてあるということになるのではないでしょうか。結局しょうゆの正価があって、値ごろ感はいくらか。いくらになればいくら売れるかということだと思うのです。しょうゆの例で本当に恐縮なんですが、面白いことにある金額まで下げると、途端に売れるようになる数字があります。それ以下にしてもそんなに増えない。同じです。それを値ごろと言うのです。値ごろ感で売って、それに合わせて経営をどうするかという問題だと私は考えています。と申しますのは、お金をお出しになるのはお客様です。懐から金をいくら出そうかなと思って行為されるのがお客様で、いただいたお金をどう使うかというのは経営者の立場です。そこを分けて考えています。

規制緩和になればどうかわかりませんが、今は運輸省に申請して値段を上げます。これだけ原価が上がったから、これだけ上げてもらう。しかも独占企業ですから、やむを得ず乗る方がいらっしゃるかもしれませんが、逸走という問題が発生します。逸走というのは何かというと、上げたことによって、値ごろどころか高すぎるので、もう乗るのはやめた。違うものに代わっていってしまうという人です。どう頑張っても乗用車のほうが便利だと思います。好きなところに好きなとき行けるわけですから。

この間、身障者の方と話しましたら、身障者は乗用車がなければもうどうしようもない。バスなんか乗っていられない。相手の家まで行けてしまう。運転は片手だけでもできるようになっている。だから乗用車のほうがいいという話がございました。そのとおりかもしれません。しかし、バスはバスでいいところがあると思います。例えばとても安全です。安全だということは重大です。それから迅速・快適。快適の中には値段も入っているのかもしれません。低床式と大分話が違うんですが、何で低床式を入れた、コストを考えないのかということになるからだと思ってお聞きください。

私どもの収入は毎年3.5%ぐらいずつ落ちています。ですから3年で1割近く落ちてしまいます。それは自動車に変わっていくからです。バスに良さがあれば、これを止められるのではないかと思ったわけです。低床式になりまして、車いすとまで言わなくても、お年寄りにはとても乗りやすくなりました。平らなところに移動するのは、ニュートンの力学から言うとエネルギーゼロです。高いところに上がるのは、距離掛ける重さですから、私みたいに重いとものすごく大変なエネルギーになります。ですから、何と言いましても平らでなければならない。こんなことを

 

 

 

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