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パネルディスカッション

 

「環境とくるまの共生をめざして」

コーディネーター 名古屋大学経済学部長 奥野 信宏

バネラー 名古屋大学大学院教授 林 良

トヨタ自動車株式会社 棚沢 正澄

タウンクリエイター 松村みち子

中日新聞経済部長 箕浦 啓進

 

地球温暖化問題に関する世論調査なんですけれども、 その中で地球温暖化防止のために規制措置をとることには、 約80%の人が賛成ということを言っているわけですね。 さらに、 その温暖化防止推進のための重要な行動としては何をやったらいいか、 これについては、 国民が省エネに取り組むというのが57%でトップなんです。 だから、 ここまでは皆さんやればいいということをお答えになるんですが、 じゃあ最後に、 地球温暖化防止と経済的負担というところで、 家庭の経済的負担が増えても仕方がないという回答があったのは32%、3分の1にも満たないわけですね。

これは一つの例なんですけれども、 なかなかこういうことで環境のために何かやるということについては痛みを伴いますので、 なかなかそこのところが非常にむずかしい問題がある。 だけれども、 過去、 日本の環境問題を考えてきますと、 たとえば昭和40年代、 高度経済成長のころは、 とにかく生産性を上げるということで、 それ一本で日本の経済は走ってきました。 しかし、 オイルショックを契機にして省エネに取り組んで、 日本はもののみごとにこれを克服した歴史があります。 そのときは環境問題はすなわち公害問題だったわけです。 しかし今回は、 もっと高度な環境、 地球全体を考えた環境問題ということで、 そこら辺を一般の人にいかにわかりやすく説明していくかということだと思います。

たとえば先ほどお話の出ました車の問題にしましても、 低公害車の電気自動車ですね。 これがなかなか日本では一般にまだ普及しておりません。 ですが、 こういうものについても、 私自身、 電気自動車というと何を思い出すかといいますと、 私はイギリスに3年ほど住んでおりましたので、 そのときにイギリスのミルクカーというのは全部電気自動車なわけです。 なぜ電気自動車かといいますと、 これはまず音がしない。 スピードは時速10キロとか20キロ、 大変遅いスピードなんですけれども、 こういう遅いスピードだけれども、 音がしない。 それから毎日同じ地域を配達するということで、 配達する方もそうだし、 それから一般の国民もこれを、 ミルクを配達するのは当然電気自動車というふうに受け入れているわけですね。 こういう一般の人の意識もそうですし、 イギリスの社会全体が、 そういうような朝早くからミルクを電気自動車のミルクカーで配って回るというのが一つの文化になっているわけです。 そういうようなことで、 国民の意識をこういうふうに変えるということはなかなか大変な問題なんですけれども、 それをどうやって変えていくかというのがこれからの大きな問題になっていくと思います。

 

 

 

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