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中で、色々な問題を検証する時期にさしかかっているのではないかという議論が出てまいりました。特に先ほどから申し上げておりますお客さまの入り込み数が非常に増えているということと、上高地へも大型観光バスが乗り入れできる状態になり、大渋滞、大混雑が恒常的な状態になってまいりました。又、沢山の人が入ることにより、ゴミの問題、下水の問題等色々な問題が複合し、観光バスによる排気ガスの自然への影響というものも、長野県の自然保護連盟の皆さんの調査によると、かなり樹木への影響も出ているという指摘がされるような状況になりました。

このような状況の中で、平成6年には、年間140万人もの方が訪れ、10年前のほぼ倍という状況になりました。更に今年の12月6日には最大の難所でございました、長野県と岐阜県を結ぶ中部自動車縦貫道の安房トンネル区間が開通しますが、これが開通しますと、来年には更に多くの皆さんが押し寄せてくるのではないかということが懸念されております。

この中で、上高地のマイカー規制という問題について、ちょっとご案内させていただきます。このマイカー規制というのは昭和50年から始まりました。昭和50年は、夏の30日間のみということでしたが、年々期間が延長され、平成8年からは通年規制になりました。上高地が開いているのは4月27日から11月10日までですが、この期間はマイカーが一切入れないということになりました。「上高地自動車事業適正化委員会」という会がありますが、これは長野県、長野県警察本部、環境庁、道路管理者、林野庁、地元市町村、交通事業者等の関係団体で構成されており、ここで交通規制をどうするかということを相談し、実行してきた訳です。このマイカーの乗り入れ規制により、一時的には一定の効果を上げてまいりましたが、増えつづけるマイカーの乗り換え基地の整備の問題とか、大型観光バスは乗り換えなしでそのまま入れますので、大型観光バスの増加の問題等がついてきて、もうマイカー規制だけでは難しいのではないかというところにさしかかっております。

それでは次にどうするかということですか、いまのところ色々な利害関係も絡んで大変難しいところですが、1つの方向性として、いま私どもの始めている低公害バスによる輸送方式の推進と、大型観光バスの乗り入れをもう少し規制するべきではないかという意見等が出ており、これは現在、上高地自動車事業適正化委員会の中で色々な論議を続けているところでございます。

このような色々な問題がある中で、私どもとしても自然保護という考えの中で、どういう形の輸送形態が良いのかということを色々な角度から検討してきた訳ですが、将来、これは発生源の問題もありますが、電気バスの導入を考えております。電気バス自体は無公害でありますが、当面は技術の面で追い付かないところがありますので、現実的に最善の方法ということで、このハイブリッドバスの導入に踏み切った訳でございます。

この低公害バスのメーカーは日野自動車で、先程申し上げたディーゼルと電気の複合によるシステムです。具体的にはパンフレットも入れてございますのでご覧下さい。外観は普通のバスと全く変わりありませんが、実は25個のバッテリーを、バスの下に内蔵してあります。これがこの低公害バスの電気モーターで、先ほどお話しした足りないところを補助するというものですが、このハイブリッドバスも、当社で導入の検討を始めた当時は、東京圏、名古屋圏、大阪圏等のどちらかという平坦地の都市部では運行実績はありましたが、標高1,000〜1,500mの坂道を登る山岳地帯での導入事例はございませんでしたので、私どもも導入については大変心配いたしました。バスメーカーとの色々な話の中でも、メーカー側としても「ちょっと……」と二の足を踏むような状態でしたが、上高地の自然保護という観点から、これ以上遅らせることはできないという、輸送業者としての責任の中での強い決意もあり、多少トラブルがあった

 

 

 

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