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〈事例報告〉

上高地におけるマイカー規制とハイブリットバスの運行について

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松本電気鉄道株式会社 常務取締役 田中幸徳氏

ただいまご紹介をいただきました田中でございます。

それでは、いま司会者からご紹介のありました通り「上高地におけるマイカー規制とハイブリッドバスの運行について」ということでお話しをさせていただきます。

当社は日本でも有数の景勝地であります中部山岳国立公園の上高地に、人にやさしい、そして自然にやさしい低公害バス(ハイブリッドバスと呼んでおります)を山岳観光路線に本格導入いたしました。先程松本先生もおっしゃっておられましたが、ハイブリッドというのは、色々な意味があるそうですが、2つのものを共用するというような意味で、私どものハイブリッドバスは、ディーゼルの持っている動力源と電気の持っている動力源を2つ使えるエンジンの低公害バスでございます。このハイブリッドの方式はいろいろありまして、私どもが採用したのは電気とディーゼルですが、他に油圧式、天然ガス方式と従来のディーゼルとを組み合わせるというものがあります。

電気バスというものを日本も各メーカーがそれぞれ開発をされたようですが、問題はバッテリーの開発がなかなか追い付かず実用化には足踏みの状態がずっと続いておりました。その後研究が進み、ディーゼルエンジンが発進の時の出力を100とした場合に、その出力を70%くらいに抑えると、黒煙が大変減少するという研究結果が出て、ディーゼル本体の持っている力を70%くらいに抑えて残りの30%を電気なり他の天然ガスで補うことによって、低公害のしくみができるということになりました。当社が導入しましたハイブリッドバスというのはいままでの数値に比べ、黒煙が70%。NOx(窒素酸化物)が20〜30%燃費で約10%抑えられることが分かりました。最初は平成6年7月に4台の導入をいたしまして、引き続き平成7年に6台、平成8年に10台、今年は5台で、現在全部で25台の稼働台数でございます。

この中部山岳国立公園の上高地という名前は、ご存知の方も多いと思いますが“神聖な谷間の秘境に神々が集まる”という意味で、上高地は神さまの「神」に「河内」と書いて「神河内」と昔は呼ばれていたそうでございますが、その神秘性とも相まって、日本でも有数の自然がそのまま残る美しい所でございます。

ここは明治37年に温泉設備が整備されてから登山者の基地となり、大正4年の焼岳の大噴火により大正池ができたり、昭和8年に釜トンネルという大変な難所がありましたが、これが整備開通して、バスが上高地まで乗り入れられるようになってから、登山者中心であった上高地も、大衆登山ブーム、レジャーブームで一般の方が沢山入るようになりましたo又、昭和44年には東京電力による電源開発のダム工事で、現在の国道158号線の付替ができ、交通量は飛躍的に伸びてまいりました。

このように、宿泊施設や道路状況が改善されてきますと、訪れる人が年を追って多くなってまいりました。こうした状況の中でいま何が問題かと言いますと、やはり上高地というのは中部山岳国立公園の特別天然地域で、自然保護を最優先する

 

 

 

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