日本財団 図書館


設備等が未整備で、日本語ガイドも殆どいない等の事情から夏期の限られた期間に西安を訪れるのが精一杯であったのが、中国の関係者の絶えざる改善努力により交通通信施設、宿泊施設、飲食施設、日本語ガイドの養成等が進み、また、多くの新たな観光資源も出現してきていること、シルクロード旅行の周遊化、通年化を実現するために休憩施設の整備、土産品、アトラクションを含めた新たな観光魅力の発掘、航空、鉄道輸送サービスの充実強化、博物館の整備等が今後必要であること等について講演が行なわれた。

新疆文物管理事業局長の岳峰氏から現在旅行者に開放されている高昌故城、交河故城等に加えてチェルチェン遺跡等今後観光の用に供されれば耳目を集めるであろう多数の遺跡の存在についての紹介があり、これらを可能な限り旅行者の目に触れるものにするよう観光・旅行関係者との緊密な連携の下に推進していきたい旨の意向が表明された。

また、新疆航空公司営業部長の胡亜明氏からは「新疆航空公司の事業と発展計画」について、新疆国際旅行社副総経理の王威氏からは「新疆の日本人旅行者受入について」の紹介があった。

意見交換会が終わってウルムチ市内の視察を行なった後、夕刻にウルムチを出発してバスでトルファンに向かい、次いで8日から15日までトルファンからコルラ、クチャ、アクスを経てカシュガルまで天山南路を走行し、加えて、パミール高原のカラクリ湖までの調査を行った。

歴史文化資源としては、高昌故城、アスターナ古墳、ベゼクリク千仏洞、交河故城、カレーズ、鉄門関、キジル千仏洞、スバシ故城、香妃廟等を訪れ、その素晴らしさに感銘を受けたが、現在の住民であるウィグル族等の少数民族が回教徒であることから、西に行くに従って彼等が多数を占めるとともに仏教徒である先住民族の残した遺跡等に対する認識が薄くなり、その存在も不確かになることが感じられた。

自然資源としては、火焔山、塩水渓谷、パミール高原等の雄大な景観を楽しむことが出来たが、折悪しく吹き荒れた砂嵐に妨げられて天山の雪を抱いた山並みを殆ど見ることが出来ず、火焔山の燃えるような朱色やパミールの雪山の輝きも霞がかかっていた。

火焔山中の葡萄溝において多種多様な葡萄を賞味し、ドライブの途中路傍で売られているハミ瓜の甘露に喉の渇きをいやし、オアシスで栽培されている白菜、トマト等の新鮮な野菜やイチジク、ザクロ、リンゴ等に舌鼓をうった。子羊の丸焼き、シシカバブ、水煮等羊肉料理も多彩を極め、回教徒伝来の各種の麺もイタリアのスパゲティ、ペンネ等や日本のホウトウ、そーめん等を彷佛とさせるものがあり、麺類はシルクロードから伝来したと言う説を肯かしめるものがあった。また、トルファンで飲んだ楼蘭ワインは、漢詩に謳われた葡萄の美酒を思わせる絶品であった。

カシュガルでは、ウィグル人の家庭の昼食に招かれた。贅を尽くした豪華な客間で次から次へとでてくる奥様の手料理を堪能したものの、訪れた際に1杯、食事の際に1杯、去るときに1杯というアルコール度の強い白酒を大杯で飲み干すと言う地元の風習を強要され、回教徒なのにそんなにそんなに酒を飲んで良いのかといぶかりつつ這々の体で退散する一幕もあった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION