新疆ウィグル自治区の訪れた各地で観賞することの出来たウィグル族の踊りは、古の唐の都で観賞された胡旋舞を思い起こさせるものがあった。最後に踊りを鑑賞していた観客を舞台の上に招き、見よう見真似ではあっても踊り手とともに踊るのは興趣のつきないものがあった。
各地の博物館では貴重な出土品等を観賞することができた。多数展示されていた古代のミイラのなかでは、楼蘭の美女の優雅さ、西域に出かける玄奘三蔵に会ったと言う張雄将軍の逞しさ、チェルチェンの貴婦人の威厳と殉葬者の苦悶等に深い感銘を受けた。
旅先で泊まったホテルは、24時間湯が出て、清潔なリネンサプライがあり、暖かい食事が提供され、鍵のかかる部屋に宿泊することが出来た。クチャのホテルの副支配人の話では、日本人旅行者に出す食事は油の使用を控えめにし、野菜を増やして量を少なめにするようにしているということであり、カシュガルでは従業員が民俗舞踊で出迎えてくれ、北京への旅立つ前の晩餐は果樹園の木の下で取り立ての果物を賞味させる等細やかな配慮の感じられる受け入れのための努力が行われていた。
2000kmを越えるドライブに使用されたバスはエアコン付き、リクライニングシートの最新鋭の日本車であり、また、各地で通信施設、飛行場の整備、鉄道の延伸工事、石油パイプラインの整備等が精力的に推進されているのを目の当たりにした。
日本語ガイドの養成も進み、各地において日本語の意志疎通に支障のない状況が整備されつつある。
新疆ウィグル自治区の旅行・観光を取り巻く諸条件の改善は目覚ましいものがあるものの、より一層の観光の振興を推進していく上で改善しなければならない事項も少なくない。当面の改善を急ぐ必要があるものとして次のような諸事項が挙げられる。
1) 道路は舗装されているものの、大型貨物トラックの頻繁な通行等により路面の劣化が著しく、今回の調査においても衝突、横転等の事故を数多く目撃した。道路の維持管理に努めるとともに交通安全規制の強化や交通案内標識等の整備に努め、安全な旅行のための環境要件を整備を急ぐことが望まれる。
2) 全行程の移動を全てバスによることはいかに最新鋭のバスを導入しても肉体的に厳しいものがあり、現在整備を急いでいる空港や鉄道の延伸工事の進捗に併せて、空路や鉄道による移動を可能にすることが望まれる。このことは旅行手段を多様化し、旅の魅力を増すものともなると思われる。
3) 主要観光地点問を移動する途中の休憩施設は、トイレ、飲食、案内、ショッピング展望等あらゆる利便の面から見て十分とは言えない状況にある。旅行をより快適なものとするために休憩施設の整備を推進する必要がある。特に、若い女性の旅行者の招致を意図するのであれば、トイレの改善を急がなければならない。
4) 素晴らしい観光資源は存在するが、観光地における案内システムは旅行者にとって必ずしも便利なものではなく、時に混雑等による身の危険
