日本財団 図書館


ルポ

 

◇利尻礼文消防事務組合消防本部◇(北海道)

018-1.gif

利尻礼文消防事務組合は、日本最北端の稚内市から西方約52km、フェリーで約2時間の利尻島(利尻町、利尻富士町)・礼文島(礼文町)で構成されている。

利尻は、アイヌ語でリイシリ(高い島)、礼文は、レプンシリ(沖の島)という意味で、その名のとおり利尻島には、日本百名山にも選ばれている利尻山(別名「利尻富士」)が天高くそびえている。

礼文島は、利尻島北西沖に位置し、礼文岳を中心に丘陵が起伏する南北に細長い島である。両島とも夏には高山植物が咲き乱れ、島中がフラワーガーデンとなる。

最近の登山ブームから、両島を訪れる観光客も急増している。

また、利尻と聞けば「こんぶ」「うに」とすぐ出てくるほど、その海産物は全国に知られ、9月の初旬に訪れたときは、海岸沿いの方々でこんぶを干す光景を見ることができた。

消防事務組合の発足は昭和48年、現在1本部・1署・2支署・4分遣所の体制で、それぞれの町に常備職員を配置し、44人の職員が離島という特殊な条件のもと安全で安心して暮らせる町づくりに取り組んでいる。

★厳しく長い冬に立ち向かう!

対馬暖流の影響で、道北内陸部に比べて温暖とはいえ、半年間続く冬は、風が強く厳しい。

この過酷な環境下、職員は水利の確保・点検、除雪作業を1日に何度も行う。

小坂消防長から話を伺っていて特に興味を引いたのは、消火栓の凍結防止のため、25度の焼酎を入れるということである。寒い地域ならではの「知恵・工夫」と感心した。安全を第一に考え、職員一丸となって冬に立ち向かっている姿が頭に浮かぶ。

★町ぐるみの活動!

火災件数は、各町とも年1件程度だそうだ。これは、昭和39年に大火に見舞われた経験から、住民1人1人の防火に対する意識が非常に高いことと、消防の地道な予防・広報活動(町の広報誌に消防PRページを設ける等)の成果だと感じる。

消防本部では、婦人防火クラブ・少年消防クラブの育成指導に力を入れている。特に婦人防火クラブは、自主的な活動を活発に行っている。消防本部庁舎前の花壇も、この婦人防火クラブの活動により美しく整備されていた。

また、島の行事等にも積極的に参加し、あらゆる機会に火災予防を呼びかけている。その際、職員手作りのアニメキャラクターの山車が繰り出す。毎年1台作られるこの山車、普段は消防本部庁舎前に飾られていて、日夜、火災予防をアピールしている。

「町の人達の協力がとても大きいので感謝しています。また、町の人達みんなが知り合いなので、私達も気を抜かず頑張っています。」と小坂消防長。

町ぐるみの活動は、ますます盛んになりそうだ。

★「和」を大切に!

小坂消防長は、日頃職員に「消防職員としての自覚と誇りを持ち、和を大切にしよう!」と呼びかけている。

島どうし離れているので、職員間の意思疎通に気を配り、何でもいいから意見を出し合うという雰囲気作りを心掛けているそうだ。

空港整備も進んでおり、これから観光客等の増加による消防需要の拡大が予想される中、それに対応する利尻礼文消防事務組合のまとまりは、消防長を中心とした揺るぎない万全のものと確信した。

(佐藤 俊夫)

018-2.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION