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消防職員のための法令用語解説

 

行政手続法の用語の定義(5)

 

8 届 出

届出の定義は、次のとおりである。

「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務づけられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。」(行政手続法二条七号)。

この「届出」は、法令上の「報告と、「提出」、「申告」等という用語も含まれる。

「申請」についても、「行政庁に対して一定の事項の通知をする行為」に該当することになってしまうので、「届出」の定義の中から、「申請」が除かれることを明らかにしている。

「法令により直接に当該通知が義務づけられているもの」としては、次の2つの場合が考えられる。

1つ目は、一定の事実が生じたとき又は一定の行為をしたときにその旨の通知をしなければならないとされて規定されている場合(いわゆる事後届出の場合)である。

例えば、生活保護法61条の、「被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があったとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があったときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。」という規定による届け出が、これにあたる。

2つ目は、一定の行為をしようとするときに、あらかじめその旨を通知しなければならないと規定されている場合(いわゆる事前届出の場合)である。

例えば、食品衛生法19条の5の規定の検査施設の変更等の厚生大臣に対する届出が、これにあたる。

消防法8条2項の管理権原者が防火管理者を定めた旨の届出は、1つ目の例といえよう。

そこで問題となるのは、届出がされると、行政手続法37条の規定により、「届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。」ことになっていることである。

そこで、例えば、選任された防火管理者の選任届出が消防署長になされれば、管理権原者は選任届出の義務をはたしたことになる。

ところが、その防火管理者が、防火対象物の規模等から考えて、管理監督権限がなく、適切な防火管理がなされないことが予想される場合がある。この場合は、前記の行政手続法37条の規定から、「届出」の受理の留保ということは難しいので、「届出」の受理の拒否処分をして、管理監督権限を有し、適切な防火管理をすることができる防火管理者を、あらためて選任してもらうことになろう。

 

全消会顧問弁護士 木下 健治

 

 

 

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