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後に発症する可能性がある病気で,重症な敗血症を起こして,手足の末梢のほうに重症な軟部組織の感染を起こします。致命率は高く,50〜60%の人は亡くなってしまう病気です。肝硬変のある人は,なるべく生の魚介類を食べないほうが無難のようです。時に,海で外傷などによる傷口からこの菌が感染することがあります。軟部組織に感染して,時に敗血症を起こすことは健常者でもあり得ます。しかし,抗菌剤が有効です。ニューキノロン系や第3世代セファロスポリンやアミノグリコシド系やテトラサイクリンなどいくつかよく効く薬がありますので,早期に治療する必要があります。

 

3)カンピロバクター

カンピロバクターも動物が持っている菌で,豚,牛,鳥などの肉を介して感染することがあります。症状は下痢,腹痛,吐き気,嘔吐,時に血便です。先日も当院の医師が,焼き鳥を食べた2日後から下痢を起こし,かなり症状が強くて入院したのですが,この菌が検出されました。別の病院の医師も,同じ時期に下痢症状が強くて当院に入院しましたが,やはりこの菌が検出されました。そのほかにも6月中に外来で数人,この菌による腸炎の患者を診ました。

症状の強い場合はエリスロマイシンやニューキノロンなどの抗菌剤を使って治療します。予後はよいのですが,時に関節炎や他の臓器に感染を起こしたりすることがあります。それからギランバレー症候群といって,手足の運動神経麻痺を起こす病気がありますが,この前駆症状として下痢を呈す人がしばしばあります。下痢のある患者の便の培養からこのCampylobacter jejuniと所という菌がしばしば検出され,約3割のギランバレー症候群の患者にはこの菌が発病に関係しているのではないかといわれています。ギランバレー症候群は非常にまれな病気なので,この

 

 

 

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