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おわリに

 

癌患者の緩和ケアのなかで看護婦が果たすべき役割には,多くのことがありますが,どうするかわからないという理由で,患者から遠のいていたのでは,何の解決も得られません。自信がないときでも,患者に近づいて話してみると,何をすればよいか必ず把握できるはずです。

癌は身体的な疾患で,精神の疾患ではないのですから,患者を悩ませる身体的な症状の除去を目的とした医療を実施する必要があります。身体的症状が緩和するにしたがい,患者の心の問題も軽くなっていきます。そうすることで患者の心へも対応しやすくなるのです。

このような患者ケアの知識と技術を短時間で学べるような教材がいくつも用意されています。これらの教材を一晩読んだだけでも,皆さんの看護ケアの質はかなり向上するはずです。痛みへの対応を手始めとして学び,実地に移していくと,能率よく緩和ケアが身につき,自信がもてるようになります。一人ひとりが努力を重ねていくことで,チーム全体の力が強まり,望ましいチームワークが育っていきます。このようなケアは,末期患者だけに必要なのではなく,どの病期の患者さんにも必要なことを理解しておくことも大切です。そうすることで,治療も看護も患者にとり望ましいものへと改善されていくのです。

患者さんには,痛みの治療のための鎮痛薬を要求する権利があり,医師にはそれを投与する義務があるのです(WHO,1990)。また,痛みを除去するために有効な治療法があるのに,それを実施しないのは倫理的に許しがたいことでもあります。これらのことに無頓着な医師と看護婦がいなくなるよう,そしてこのような権利があることを知っている患者さんが増えるよう,日頃の看護活動のなかで努力していってほしいと思います。

 

 

 

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