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1. 投与量の不足

対応の基本は増量です。モルヒネなどの投与によって痛みが軽くなっているのですが,増量することに恐れを抱いていて,必要な増量を行っていない場合や,患者さんとの対話不足で,効果判定が甘くなっていることなどが原因です。このときに残っている痛みには,その薬の増量で対応できることが多いですし,補助薬を追加するとよい場合もあります。残った痛みに対応する方法が用意されていることをあらかじめ患者さんに伝えておき,痛みが残っていることを遠慮せずに医師や看護婦に訴えるよう指導しておきます。

患者の訴えを軽視せず,効果と副作用をよく観察していれば,投与量不足を避けることができます。

 

2. 副作用対策の不足

便秘や吐き気の対策がなまぬるいと,長期反復投与が継続できなくなります。副作用を嫌った患者さんが服用しなくなっているかもしれません。副作用対策の強化で対応します。

 

3. 未解決の心理社会的な悩み

心に問題があり,解決の道が見つかっていないとき,問題の客観的な大小にかかわらず,患者さんにとっては大きな悩みとなります。このときには,効くべき痛み治療法が効果をあげません。患者さんは,悩みをただちに表現するとは限りませんが,暗い顔をしていることが多いようです。気づいてあげて,話し合ってみると解決の糸口が見つかるはずです。解決の糸口が見つかって患者さんが安心すると,解決にいたる前から,同じ薬が同じ量,ときにはもっと少ない量で効くようになります。

 

4. 浮腫,胸水,腹水の進行

このような余分な体液中にもモルヒネなどの鎮痛薬が移行して,血液中の薬の濃度を低下させることが知られています。対応法は増量です。

 

5. 鎮痛薬が無効な痛み

痛みの診断がきちんと行われることで,このような痛みが把握できます。すでに述べましたように鎮痛補助薬など鎮痛薬以外の治療法を併用します。

 

 

 

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