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無かった。

高校の理科も多分に「科学の方法」,「探究の過程」を取り上げようとしていた。この時期の高校理科は基礎理科(6単位),物理I(3単位),化学I(3単位),生物I(3単位),地学I(3単位),物理?(3単位),化学?(3単位),生物?(3単位),地学?(3単位)の7科目で構成され,生徒はこれらの中から6単位以上を選択することになっていた。多くの生徒は化学Iと生物Iを選択履修し,地学Ιならびに地学?を履修した者は10%に過ぎなかった。もっとも地学Iには海洋の教材は含まれておらず,海洋教材を扱ってよさそうに思える地学?にも地球物理,宇宙物理の内容は進出したが,海洋教材は取り上げられなかった。

 

4. 環境教育を意戯した時代(中: 1981〜1992年,高: 1982〜1993年)

1970年に,アメリカで環境教育法が制定されてから,わが国でも環境教育の必要性が論議され,中学校理科と高校の地学(4単位,選択)に「人間と自然」と称する項目が設けられた。しかし,その内容は概ね大気,陸水に絡む環境問題,環境保全に集約され,海水に関るものは皆無であった。

なお,この時期から中学校理科は週あたり3時間に減り,高校理科は必修の理科I(4単位),選択の理科?(2単位),物理(4単位),化学(4単位),生物(4単位),地学(4単位)となり,実質的にはそれ以前の理科に比べて中,高ともに弱体化したといわれている。

 

5. 現行の理科(中: 1993〜2002年,高: 1994〜2002年の予定)

中学校理科は身近かな自然の事象を直接体験させることに主眼が置かれているが,海に関する内容は学習指導要領の中に位置づけられていない。指導要領作成協力者の中から海に関する内容を扱うべきとする提言があったが,その採否の検討はなされなかった。

高校理科では,地学IAで「海水中と海底の資源」,「海流と気候(エルニーニョなど)」が,また,地学IBでは「海水の性質とその運動」,「海洋底の動き」を扱っているが,この2科目の選択者を合計しても同学年の高校生の10数パーセントでしかない。もちろん,理科の他の科目(総合理科,物理IA,物理IB,物理?,化学IA,化学IB,化学?,生物IA,生物IB,生物?,地学?)では,海洋教材は扱われていない。

 

 

 

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