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を求めるため」が62.5%で、これら二つが導入の重要な理由であることが知られた。すなわち、ここでは裁量労働制の導入イコール能力主義による生産性の向上によって、従業員・企業の活力を高めていこうとする姿勢がうかがえ、「恒常的な長時間労働を抑制するため(時短の進行)」あるいは「人件費の抑制」などの理由はいわば第二次的な目的となっていた。

人口高齢化に伴う高齢者比率の高まりと少子化の結果である労働力人口の減少は、今後、労働力需給の逼迫を生じさせることは想像するに難くなく、また、組織構造の変化などを考慮すると、若年層の時点から人材の質を高めることが重要となってくる。その点「係長クラス」、「主任クラス」に裁量労働側を導入することは、早い段階で高い能力と資質を高める要素となり、年功序列から能力・業績主義への移行、さらには労働力人口の減少による企業生き残りのための少数精鋭者の育成になり得るものと思われる。

 

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4.ホワイトカラーに対する導入への対応[第24表参照]

1987年に「裁量労働制」が初めて導入され、当初は、創造性や専門性の高い職種(研究開発、情報処理システムの分析・設計)を対象とした制度であったが、昨今ホワイトカラーを管理し、生産性を向上させなければ、今後の日本の産業界で生き残れないという危機感から、裁量労働制の職種範囲にホワイトカラーの導入拡大が求められている。

そこで、労働基準法が改正され、ホワイトカラーに対し、裁量労働制の適用が可能となった場合、その適用に踏みきるかを調査してみたところ、「導入する」、「導入を前向きに検討する」と回答した企業は7.0%、20.1%で、この両者で27.1%の率を示した。企業規模別には、規模の大きい企業ほど導入に前向きであることがはっきりと出た。

なお、前述した技術系の常勤従業員を有する企業を対象にした裁量労働制の導入状況と見比べた場合、制度改正によりホワイトカラーに裁量労働制を導入する(「前向きに検討する」を含む)が、技術系職員に導入している(「予定している」を含む)を全体で9ポイント上回る結果となった。また規模別、産業別でも前者が後者を上回り、企業内においてホワイトカラーが全従業員に対し高い比率で存在していることを考えると、ホワイトカラーの生産性の向上を企業側は重視している感を得た。

 

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