〔ディスカッサントのコメント、報告者による回答〕
〔ディスカッサント〕
アジア太平洋統計研修所(SIAP)講師 ビジョイ・レイチャウドリ
Bijoy Raychaudhui, Lecturer/Statistician, U.N.Statistical Institute
for Asia and the Pacific(SIAP)
議長:それでは、ビショイさんに尾高先生の論文についてのコメントをお願いしたいと思います。
ビジョイ:議長、皆様、ありがとうございます。まず、主催者に対しまして、尾高煌之助教授の「アジア経済史の理解と共有、アジア統計データベース・プロジェクトの意義について」の大変示唆に富んだ論文について、ディスカッサントとしてお招きいただきましたことに御礼を申し上げたいと思います。一橋大学経済研究所の尾高教授とその同僚の皆様が、たいへん困難な仕事に取り組まれたことに対して心から敬意を表します。
尾高先生は、最初に、先生の論文が唯一、「持続的発展を支える統計」と直接関係がないものだといわれましたけれども、先生がこのテーマで取り組んでおられる仕事は、環境資源勘定を構築する仕事と同様に複雑で困難なものであります。
アジアの大部分の地域の経済のいくつかの側面について、歴史的データと現時点のデータとを含む時系列統計を構築しようとするこのプロジェクトの目標は、優れた考え方のものであります。と言いますのも、知識を十分に持った上で行う歴史的な洞察は、政策の方向変化の根底にある論理の正しい理解を可能にさせるものであることは、普遍的に認められているからであります。実際、政策担当官は、現に当面する問題に対処するための政策を立案する際には、絶えず歴史の教訓を重視しておりますので、このような展望からすれば、このプロジェクトの成果への需要は大きいものであるはずだと思います。
先生の論文では、プロジェクトの詳細と、図示されているような興味深い成果が記述されておりますが、過去2年間に達成された進展、特に対象国に関する第二次世界大戦以前の統計の作成に成功された点については、あまり述べられておりませんでした。これに関連して、アジア諸国においては、比較可能な統計を作成する能力は様々でありますので、できれば、このプロジェクトにおいて、データの整合性を最大限にするよう設計され、標準化されたフレームワークを用いて、実際上すべてのデータを集計できるようにすることが望ましいと思われます。この点をあえて強調しますのは、私の理解では、このプロジェクトの最終成果は、ユーザーフレンドリーで研究者その他のユーザーが研究に必要とするすべての情報を入手できるような「ワン・ショップ」施設としてのデータ