日本財団 図書館


ベースであろうと思うからであります。

しかしながら、論文でも認めておられるように、これは決して容易な仕事ではないでしょう。19世紀中頃まで遡って歴史的データを入手することは、いくつかのケースでは必要となる統計が作成されていないかもしれない、といったように非常に難しいことなのであります。さらに、また、この150年間について考えてみますと、統計が入手可能だとしても、この期間のうちに、用いられる概念や定義に多くの変更があったり、また、データに関連する地理的な境界に変更があったりということもあります。それ故、このプロジェクトを有効なものとするためには、入手可能なデータを作成するときに用いられた概念、カバレジ、そして方法論を念頭に置くことが必要だと思います。

個々の国に見られる統計上の欠陥にも留意しなければならず、このことは、データベースにおいて重視される必要があります。先生の論文では、データの一部の要素を推計して時系列の統計を構築する、異なる時期のデータをリンクさせるための変換スキームを開発する、欠損値を補足する、といった努力が、特別になされるだろうと述べられております。しかし、このアプローチには危険が伴います。なぜならば、ある国のデータの調整は、その国の統計作成者に任せるのがベストだからであります。このような主張にもかかわらず、アシュスタット・プロジェクトの研究者によるデータの質の改善のためのコメントは、各国の統計作成者が歓迎すべきものだと思います。

今日の世界では、信頼のできる情報やデータが、経済活動に従事する社会の各分野、即ち、政策立案者、研究者、ビジネス・セクター、そして、一般の人々によって必要とされておりますが、国の統計部局にとって、正確な統計を作成することは大変な重荷であります。この問題は、多くの会議の場で、いくつかの国際機関で、また、国連機関においても議論されております。国連では、極めて大量のデータを載せた広範囲の出版物を出しております。このようなデータの多くは、電子的手段でも入手可能となっております。このプロジェクトが必要とするデータの収集作業を最小限なものにするためには、すでに関係部局により作成されている資料を活用されることが有用と思います。

オンライン・データベースの構築でありますが、これはデータベースの管理以上に、大きな組織的な仕事であります。データベースが、異なる国々のデータを集めることから生じる多面的な問題に対応しなければならないという事実のほかに、二つの大きな事柄を考えなければなりません。まず、最初に考えていただきたいことは、たくさんの領域をカバーしていることから、重複を見つけ、これを避ける努力が必要だということ。そして、第2として、データは頻繁に改訂され、更新されなければならないということであります。近代的なデータ処理技術を使うことによって、問題を最小限に食い止めることはできても、ソフトウェア技術の知識と、国のデータを取り扱う技術との両方を持っている訓練を受けた大勢の人達が、データベースの管理には必要となると思います。

最後に、また、簡便で安価なアクセスを、研究者その他のユーザーに可能にするという課題に取り組む必要があることを申し上げたいと思います。このプロジェクトのインパクトを最大限なもの

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION