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〔報 告〕

「アジア長期経済統計データベースの意義と効用」

 

一橋大学教授 尾高煌之助

 

“Understanding and Sharing the Asian Economic History:

On the Significance of the Asian Statistics Database Project”

Konosuke Odaka, Professor, Institute of Economic Research,

Hitotsubashi University

 

議長:次に、尾高煌之助先生の報告をお願いしたいと思います。

 

尾高:議長、ありがとうございます。

私は、このシンポジウムでちょっとさびしい気がしております。といいますのも、みたところ、私の論文は唯一、持続的発展の問題、あるいは社会指標の問題を取り扱っていないのです。 しかし一方で、私は、私どもの研究は、経済発展の持続可能性が再検討され、その政策的意味合いが形成されるための有益な、不可欠の基盤になると確信しております。

内容に入ります前に、私どもは、日本のみならず世界の各国から、データの収集や基本的な方法論の組み立てと基礎的なデータの収集、および改訂そのほかについて専門的な知識を与えて頂くなどの御協力をいただいておりますことを、とりわけ、色々の大学の関係者やアジア経済研究所の関係者の方々にあつく御礼申し上げたいと思います。

さきほど竹内教授が、統計データの収集についてあまりに野心的になるべきでないとコメントされましたが、私はこれにショックを受けております。といいますのは、私どもの研究プロジェクトは、目的とか方法論の点であまりに野心的すぎるかもしれないからであります。

このプロジェクトを、私どもはアッシュスタット(ASHSTAT)と呼んでおります(「アジア歴史統計プロジェクト」(Asian Historical Statistics Project)の略称)。私がまず指摘したい点は、この種のプロジェクトには歴史的な遺産というものがあるということであります。

これに関連して、三つの点についてお話ししたい。まず第1に、例えば故サイモン・クズネッツ(Simon Kuznets)氏の名前が当然思いおこされます。実は、私どものと同種のプロジェクトは1960年代に着想されまして、米国のエール大学の「経済成長センター」(Economic Growth Center of Yale University)で活動が開始されました。しかし、種々の理由によって、具体的な、統合された成果が出てこなかったのであります。私の解釈によりますと、これは一部には、コンピューティング技術の状況と絡んでおります。コンピュータ技術が非常に進歩した今日の方がデータベー

 

 

 

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