にしなければいけないか、というふうに思います。
ちょっと余談になりますけれども、実は私どもが作っている統計の中に資金循環統計というのがございますが、資金循環統計をいま中国に技術支援でノウハウをお教えしております。先般、米国とフランスと日本とドイツの4か国が揃って、中国に支援に行ったことがございます。各国とも細かいところで作り方が違うものですから、中国はどれをとったらいいのか悩んでしまったというような例がございます。このように基本的なところがマニュアルで定められていても、細かいところが各国でくい違ってしまうというところをいかに標準化していくのが難しいというふうに思いました。
それから、第3点は、統計作成の枠組みを変えていくことの難しさでございます。一度統計の作成とか、報告の枠組みができてしまいますと、それをスクラップして新しい統計の枠組みを作っていくということが非常に困難であります。
例えば、日本の金融統計を例にとりますと、銀行を中心とした預金の統計とか、貸出の統計は、預金者別とか、あるいは貸出し先別とか、金利別とか非常に詳細なデータを私どもは作っております。ただし一方で、新しい分野の統計というのは、非常に把握が難しくなってしまいます。統計データの報告者は、一度枠組みができるとそれに従って報告してくれるのですが、新しく報告を依頼するとなると、報告に非常に難色を示すことが多いのが実情です。
統計報告について、日本の場合も、企業等から報告負担の軽減を求める声が最近とみに増えてきておりまして、こういった報告負担を軽減しながら、いかに統計の精度を確保するか、あるいは新しい分野の統計をいかにきちんと捕捉していくかということが、非常に重要だと感じております。
最後に、3点目のこういった我が国の実情をふまえて整理したものを、また改めて、アジアの諸国の統計標準化に照らしあわせた場合の対応策というのを考えたいと思います。
二点ございまして、一つはやはりノウハウの共有化だと思います。論文にもございましたように、各国でエキスパティーズを高めるということが困難であれば、いくつかの国が共同しあってノウハウを高めたりスキルを高めることがよろしいのではないかと思います。そうすることによって、いわば統計作成手法がある意味で各国別々になってしまうということも回避し得るのではないかと思います。
それから第2は、現状、統計整備に関するインフラ整備がまだ不十分であるということであれば、それを逆手にとって、メリットとして生かされていったらどうかということでございます。
ちょっと例は違いますけれども、携帯電話や衛星通信といった最新の通信技術というのは、日本よりもASEAN諸国の方が非常に普及しているという話を聞いたことがございます。言ってみれば、日本の場合には電話線による電話が普及している結果、携帯電話等の最新の技術の普及が出遅れてしまった面があるということです。
これと同じように、我が国の場合には、既に古いフレームワークを壊して新しいのを作るのが困難であるというのであれば、そういう古いフレームワークがないことをメリットに標準化を図られたらいかがかというふうに思います。以上です。
議長:ありがとうございました。セリンさんにはセッションの終りで回答していただくことにします。