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〔ディスカッサントのコメント、報告者による回答〕

 

〔ディスカッサント〕 明治学院大学教授  竹 内   啓

 

議長:お二人の方のプレゼンテーションを伺いましたので、ディスカッサントの竹内啓教授にコメントをお願いします。

 

竹内:私は英語で話したいと思います。

まず、お二人の報告者には、大変に示唆に富み、このシンポジウムには、ふさわしい内容の素晴らしい論文を発表されたことに敬意を表したいと思います。この二つの論文に対する特定のコメントを申し上げる前に、私自身のこれらの問題に関する視点を申し上げたいと思います。天然資源と環境に関する統計は、最近ますます重要性を増しております。自然および社会の状況に関する正確で実際的な情報がなければ、持続的な発展のための計画は健全で客観的な根拠を持たないものとなります。

ここで、私は強調したいと思う3つの基本的な事項について、明確にしておきたいと思います。

まず、1つとしまして、天然資源と環境は常に同時に考慮されなければならず、別々に考慮されてはなりません。両者ともに自然の贈り物であって、現世代の人々と、また、将来世代の人々とのすべてが恩恵を受けるべきものであります。長期的に考えますと、自然環境それ自体とその要素である空気とか水等々は、人類にとってもっとも貴重な天然資源であります。

2つ目としまして、天然資源と環境は、主としてストックとして考慮されるべきであり、「サービスのフローの蓄積」として評価されるべきではないということであります。経済理論によりますと、人間の活動によって生産された資本ストックであれ、あるいは自然によって与えられた天然資源であれ、ストックが利用されるときには、ストックによって生産された「サービスフロー」が「消費される」とふつう想定されております。

これは、いうならば、理論であります。あくまでも市場経済理論の便宜のためのもので人工的な、理論的な仮説であります。これを天然資源例えば空気とか、太陽光とかを考えるときに適用することは、しばしば不適切になります。こういったものがサービスのフローの蓄積であると考えることはできないと思います。つまり、それは、あるがままにあるだけで、単にストックが存在することの恩恵を受けることができるだけであると思います。天然資源の利用、環境を含めてでありますが、その利用は、常に必ずしも消費として考えることはできません。資源および環境の枯渇あるいは破壊に全く比例しないで天然資源が与えてくれる恩恵がしばしば見られるからであります。もちろん、時には、天然資源の枯渇や環境の破壊によってストックが減少することがありますが、それは、そこから出てくるいわゆるサービスとは必ずしも比例しないわけです。ですから、私は、時々、環境

 

 

 

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