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〔ディスカッサントのコメント、報告者による回答〕

 

〔ディスカッサント〕 東京理科大学教授  寺 崎 康 博

 

議長:それでは寺崎教授に、これら二つの論文についてのコメントをお願いしたいと思います。

 

寺崎:主催者からのリクエストによりまして、日本語でコメントをさせていただきたいと思います。

今日は、アフリカさん、シャリさんともに非常に示唆に富んだ興味深いお話をうかがいまして、学ぶところが多くたいへんありがとうございました。そのようなすばらしい講演にコメントをする機会が与えられて、非常に光栄に思っております。

私の討論者としての仕事は、まず最初に、聴衆の皆様に簡単にお二方の講演の、講演自体は今お聞きになったと思いますので、講演の狙いの紹介をしてその後に二つほど質問をさせていただいて、討論者としての責務を果たしたいと思います。

まず第1に、本日のシンポジウムのテーマは、「持続的発展を実現するために、統計の役割を見直してみよう」ということでありますが、この持続的発展という言葉は、当初は、森林とか鉱物資源のような枯渇資源を将来の世代の人々も享受できるような方策を考えるための概念として生まれてきたと思います。ラウ・カク・エンさんが基調講演で見事に描写して見せましたように、今日直面している様々な問題、即ち、環境問題でありますとか、拡大する格差の問題でありますとか、経済活動のグローバル化に伴う経済的な摩擦等々実に多いのですが、これら発展の障害になるような課題の解決の方向が持続的発展という考え方と結びついている、ということでした。そして、 トーマス・アフリカさんとイシャク・シャリさんの講演は、これらの問題のなかで特に、格差に関する統計の現状と課題を持続的発展という観点から論じたものであります。

まず、アフリカさんは、問題解決のためには統計的可視性(statistical visibilityと呼んでいました)が必要であり、今日のような情報処理技術の発展した時代では、成長率というような平均値のみを見るのではなくて、各種の格差の状況をみながら発展のための手段を考えていかなければいけないと強調しています。さらに、国連の提唱している「人間開発指標」、ヒューマン・ディベロップメント・インデックス(Human Development Index)は、発展によって達成することのできる複数のゴールを考慮にいれたものであり、多様な価値を持つ人々の要求を反映したものであるとみています。

一方、シャリさんは、マレーシアでは、拡大する所得格差の是正が経済開発に関する大きな課題となっていることを指摘しています。この問題は、他の多くの国の例をみても簡単には解決のつく問題ではありませんので、現状をさまざまな観点から研究する必要があります。しかし、現状を検討するためのデータが十分には開示されていない(accessibility of data is limited)ということ

 

 

 

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