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を指摘されました。格差の存在というのは不公平感と結びつきやすい現象ですので、シャリさんの指摘は的を射たものと考えます。この点は、我が国の金融危機と共通性があるように思いました。

さて、私のコメントの基礎は、「持続的発展」に対する考え方というのは、「我々が各国の経済発展から様々な教訓を学んだ帰結の一つである」ということです。今から40、50年ほど前に、多くの国々が植民地から独立国になりましたが、当時の考え方は、発展を実現するには資金を供給してやればよい、という非常に今日からみると単純なものでありました。10年ほど経過して、実情を見てみると、成果は少しは上がっていたわけですが、貧困は一向に解消されていない。また、所得格差も拡大している。目指していたものとは異なった姿を見て、一つ学習をしたわけです。雇用の創出を伴う発展政策を考えなくてはいけないとか、人材育成を重視する方向に変わってきました。おそらく資源問題に対する考え方も、同様な過程で出てきたものであると思いますが、ここでポイントが二つあります。

一つは、こういう事柄を多くの国が共有する知識として持つことができたということです。 もう一つは、学習するにあたって統計数字が威力を発揮したのではないかということです。私の考えでは、数字の理解には国境がありませんので、非常に伝わりやすい。目標としても明確であります。今日は同時通訳がなされていますが、数字を読み取るにはそのような特殊な技能というのはあまり必要としないわけです。非常に数字というのは強力な伝達力を持っています。数字の背景にはいろいろな現実がありますよ、統計数値を読む時にはその現実を読み取りなさい、というふうに教室では教えますが、このことは、数字には非常に抽象的な力があって、非常に物事を抽象的に示すので注意をしなさいということを教えているわけです。それは数字の持つ「伝達力」の大きさということを逆に示しているものと考えます。

そうしますと、現実と表されている伝わりやすい数字との間にギャップが生じやすいということです。例えば、アフリカさんは、「都市化」について、例えば都市人口比率で表されますが、都市化が進むことは、今日では工業化を伴わなくても多くの国で生じているということを述べています。他にも非常にたくさんのいろいろな例を挙げておりますが、時間が限られているので質問の方に入りたいと思います。まず、アフリカさんへの最初の質問は、出稼ぎ労働者(overseas workers)について、統計に含める必要があるというふうに述べられておりますが、確かに、フィリピンは出稼ぎ労働者が多くて、国内の雇用率だけでは十分ではないということもわかりますし、家族への送金額も非常に大きなものがあるわけですが、これら出稼ぎ労働者を国内の雇用者と比べたときにどのくらいの規模になるのか、そして、彼等が帰国した時にどういう職業につくのかということについて、分かっている範囲で教えていただければ有り難いと思います。

シャリさんへの第1の質問は、マレーシアの所得格差はジニ係数で見ると、0.5近くであり、非常に高い感じがするわけですが、データの利用が限られているので、なかなか判断は難しいのかもしれませんが、データ自身に問題はないのか。或いは、ないとすれば、非常に高い所得格差をもた

 

 

 

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