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7) 地域生活における密着度、開放度、満足度

精神分裂病患者へのイメージは、回答者の基本的な社会生活の性質によっても左右されることが予想される。そこで、回答者が現在の地域での生活にとけ込み、満足している度合いとの相関を調べた。現在地区への居住年数、隣人との交際度、生活全般に対する満足度との相関のうち、意味のある相関を示したのは、隣人との交際度である。居住年数については、現在地域での居住開始の年代が、1970年代以前、と1970年代のみで80年代以降の回答が無いという点で偏りがあったので、考察から外した。

 

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表??-9から隣人との交際度が高いことと、「治療可能」とする肯定的なイメージとのあいだに正の有意相関が見られる。生活全般に対する満足度との間には相関が見られなかった。

 

2. まとめ

 

精神分裂病のイメージないしスティグマは、病気の本体よりも、時代背景、その時々の価値観に左右されてきた。本調査の結果では、精神分裂病へのイメージとしては、良いときも悪いときもあるという中立的な見方が大勢を占め、治療可能との肯定的な見方、難病、精神の分裂という否定的な見方がそれに続いた。否定的なイメージのうち、精神の分裂という現象についての不安感は、疾患としての見方からやや外れており、若年者、未婚の扶養家族を持つものにやや多く、医療経験の乏しさと、子どもに対する防衛的不安感によると思われる。肯定的イメージに結びつく要因は、精神分裂病の犯罪性は低いなどの正確な知識、またそれを実際に信じている度合い、分裂病、躁うつ病などの患者との実際の交友体験、そして隣人との交友の開放度であった。中立的な見方は、専門技能者、主婦、上記の精神障害者との交友体験であった。心の健康への関心度の高さは、夫婦、職場、退職後の生活、高齢、精神障害への関心の高さは、医学的なモデルでのイメージに寄与しているが、内容的には肯定、否定の双方がある。

高齢、精神障害への関心が高いもののうちで、それ以外にとくに心の健康への関心を持たない者には、中立的なイメージが見られた。

精神分裂病の肯定的なイメージを高める方法として、正確な知識の普及、一般の地域居住者自身の開放度の向上、実際の精神障害者の生活の姿との交流の重要性が示唆された。同時に、子供を持つ若い親の不安を軽減するための啓蒙、支援も必要である。

 

 

 

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