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おわりに

かつて神戸港はハブ港であるといわれてきた。遣唐使、遣隋使の時代から、事実上日本の表玄関としてアジアに向けて開かれてきた。鎖国の行われた二百数十年間は長崎にその立場を譲ってはいたが、1868年の開港以来再びその立場を取り戻し日本のハブ港という地位を保ってきた。ところが、ここにきてその地位にもかげりが生じてきた。

1995年1月17日突然襲ってきた阪神・淡路大震災により、神戸港の港湾施設は壊滅した。そして、神戸港に集まっていた貨物の多くは大阪や名古屋や横浜にルートを変えていった。それから2年ほどして港湾施設などハード面の復興は完成したが、神戸港の貨物はなかなか戻らず、震災の影響がなくなったといわれる現在でも、貨物取扱量は震災前の6〜7割台で推移しているのが現状である。

今、神戸港にとって最も緊急の課題はハブ港としての地位を回復することである。

港がハブ港として成功するための条件は二つある。その一つは、港湾利用者にとって他の港よりもより好ましいサービスを提供できる港として評価されることである。港湾産業もサービス産業の一つであり、サービス産業の収益は当然生産したサービスの量に比例するが、生産されるサービスの量は能力や能率ではなく需要の大きさで決まる。港湾の場合、そこに集まる貨物の量によって港湾サービスの生産量が決まり、それに基づいて収益が決まる。これに対してサービス産業の生産コストは時間あたりのサービスの生産量が大きいほど単価は安くなる。そして、サービスに対する需要は、一般に安いサービスほど売れ行きはよくなり生産コストは安くなる。言い換えれば需要の高いサービスほど安く売ることができるからますます需要が高まるという関係になる。

もう一つは、港湾利用者にとって安心感や信頼感が得られる港であることである。港湾などの設備提供型サービス産業の場合、需要が多くて生産量なり生産性が高いところほど提供されるサービスの質が高いと考えられる側面がある。特に

 

 

 

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