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中で、大水深バース整備が寄港航路や貨物取扱量増加に必ず結びつくといえない。欧州航路では、アジアのファースト(輸入)/ラストポート(輸出)の大半がシンガポールなどであり、入出港時に満船状態であるため、6千TEU船の場合は水深15mバースが必要になる。しかし、日本の港湾に入港する際に満船状態にあることはまずあり得ないので15mの水深は必要ない。一方、北米航路では、日本の港湾がファースト/ラストポートとなるが、欧州航路に比べ製品等は比較的軽量であり、喫水は低下せず15mバースの必要性は低い。日本では、水深15mバースは、東京湾、伊勢湾、大阪湾に各1ないし2バースあれば十分だと思う。

(5) 空きバースの発生要因

埠頭公社によるコンテナバース整備は、その港湾の需要予測に基づくが、建設に際しては使用船社を確定する必要がある。このため、埠頭公社は船社に働きかけ、船社も施設の利便性やその港湾を円滑に利用していくため、新規バースの借受に応じている。このような船社は、既にその港湾でバース借受済みであることから、新規バースの整備・借受に伴い従前バースが空きバースとなる。今後、港湾運営の効率化に向けて、空きバースの用途転用などスクラップ・アンド・ビルドが必要である。

(6) フレキシブルな埠頭公社バースの整備・運営

借受使用料が高額な大水深バース建設より、公社バースの利用についてフレキシビリティを高めるべきである。

例えば、船社は1バースでは不足だが、2バースでは過大という場合がある。また、ヤードは1バース分で充足し、バースとガントリークレーンは2バース分利用したい場合もある。この場合、日本の公社バースでは、年間10数億円出費し1バースを借り2バースのコンテナターミナルとするか、出費ゼロで1バースを利用するかの選択肢しかない。

米国のターミナルは、トランシップ・コンテナの仮置きエプロンだけを借り受けられるバースもあり、借受料金も5億円である。コンテナバースも長方形に画一化されておらず様々な敷地形態がある。また、諸外国では、借受後3年までは、バースの長さ、面積等でミニマムな設定があり、その後は、貨物量の増大等に応じヤード拡大が可能な運営システムもある。神戸港の公社バースでは、一度借り受けると契約上6年間は返還できない。

公社には、外貿埠頭公団継承法の枠組みがあるが、公社バースに隣接して公共バースを整備し、船社は公社バースを借り受けながら、必要に応じ隣接公共バースを利用できるような、フレキシブルなバースの整備・運用を検討すべきである。

 

 

 

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