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型3隻、江湖型7隻、江護型4隻、海軍航空部隊も700機を保有しているが、1990年から95年までの5年間にSU-27が26機、J-8が50機と年平均15.2機の増加に過ぎないし、また技術面でも先進海軍国に比べ20年は遅れているといわれている。さらに、中国海軍の根底にかかわる問題は、創設当初から国防費を節約するために副業を行ってきたが、現在ではこれら副業収入(工場、病院、ホテル、レストハウス、輸送業、地方の工事の請負(24))が、中国古来の因習や国民性から幹部の懐に入っているといわれる汚職や、拝金主義などによる規律士気の低下という問題もある。さらに中国軍には党の強い統制や指導を受け、軍事的適合性や合理性が無視され、作戦効率を低下せざるを得ないという、イズムによる建前主義の問題や派閥問題も無視できない要素として残る。

中国海軍の今後を予察することは難しい。しかし、「重陸軽海(陸主海従)」の諺が示す通り、海軍が重視されることはなかったし、また、マハンが指摘するシーパワー国家の基本的要素である、国家の地理的特性、政府の性質や国民気質など、中国海軍が今後外洋海軍に発展するのには、地理的、民族的、歴史的に多くの問題があるように思われる。また、海軍は柔軟な運用が要求される組織であるが、中国は古来から官僚(中央)支配の国であり(現在は共産党)、官僚的非能率やイデオロギーによる非合理的戦略や戦術の採用が強制されたこともあった。しかし、中国政府当局(共産党)は中国の海洋国家への転換が自由思想を強め、大陸国家特有の専制的政治体制を崩壊する問題、大陸軍と大海軍の2つを建造しようとした国家、すなわち大日本帝国、第1次大戦時のドイツ帝国、そして最近のソ連連邦の解体が示すとおり、大陸軍と大海軍の両者を追った国家は国家財政を破綻させ、さらに大陸国家の海軍は第1次大戦におけるドイツ海軍や冷戦時のロシア海軍の例を挙げるまでもなく、常に連合した海洋国群によって打ち負かされて来た。この歴史が教える遺訓を220万の大陸軍を有する大陸国家の中国は、どのように解釈しているのであろうか。

 

おわりに

日本にとり不気味なことは、1958年9月の人民代表大会で「中華人民共和国領海に関する声明」を採択したが、そこには日本の固有領土である尖閣諸島を意味する魚釣島の記名はなかった。しかし、海洋資源への関心が高まった1992年2月に発表された「中華人民共和国領海・接続水域法」では、「中国大陸及び沿岸諸島、台湾及び魚釣島を含む付属島嶼」と明記され、その後、中国は沖縄や尖閣列島周辺で再三にわたり海洋調

 

 

 

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