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て朝貢貿易を行っていた朝鮮半島、沖縄、台湾、シンガポール、マレー半島、ベトナム、タイ、ビルマ、ネパール、蒙古などが「旧民主主義時代(1840-1919年)に帝国主義によって奪われた中国固有の領土(7)」と記されているという。このような中華思想にも基づく「華夷秩序」の世界観から、中国が考える平和は、勢力均等論ではなく覇権安定論であり、「中華一国主義(ユニラテラリズム)」であり、中国の国際関係の原点はパワーポリティックである。

 

2中国の軍事戦略

中国軍が列国の軍隊と異なる点は、人民解放軍という名称が示す通り、国土や国民を守る軍隊ではなく、社会主義革命を推進する中国共産党に従属する軍隊であり、国家指導者(中国共産党中央委員会の指導)に極めて忠実なことである。また、中国海軍が列国海軍と異なる点は、“People Liberation Army-Navy”と英訳されることが示す通り、陸軍が主導権を握る人民解放軍の中の海軍と位置づけられていることである。また、中国海軍の軍事ドクトリンの原点は、人民戦争-ゲリラ戦争理論の海上作戦への適用であり、海軍戦略の原点はかってのフランスやソ連の新興派(Yung School)のように、国土を防備するという守勢的なものである。このドクトリンは1950年8月、中国海軍の誕生直後に開かれた海軍建軍会議で定められ、70年代まではこの方針に基づき多数の小型快速艦艇と潜水艦を整備し、沿岸防備海軍の域に止まってきた。

しかし、ベトナム戦争で軍の近代化、湾岸戦争でハイテク兵器の必要性を痛感した中国の指導者は、軍の近代化、武器のハイテク化を強調するに至った。さらに、中国の沿岸地方の経済的発展が顕著となった1980年代には、経済的発展に必要な資源、特に海洋資源が着目され、党や政府、そして海軍の指導者から、海洋の重要性を強調する多数の論文が党や海軍の機関紙に掲載された。これらの論文中から代表的なのを紹介すると、

☆海軍司令員兼参謀長の劉華清(Liu Ηuaqing)(8)

「強大な海軍を建設してわが海洋事業を発展させよう」(「人民日報(1984年11月24日)」

「わが国は6000余の島嶼と数百方平方キロメートルの海洋国土を持っており、資源は極めて豊富である。海洋資源の開発は、わが国では重要な地位を占めている。現在、海洋の開発および利用は新しい段階に入っており、海洋は次第に戦略的意義を持つ領域となりつつある。......海洋事業は国民経済の重要な構

 

 

 

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