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ることが指摘された。

また、「勧告は、今まで法令や通達、補助金要綱等により全国で画一的に処理していたことが、国の関与を縮減し、条例や法令解釈権を広げることで地域社会本来の地理、自然条件、風土、歴史などの特殊性に配慮し、地方自治体が自主的・主体的な判断により個性豊かな行政、地域づくりを進めるようにすることが趣旨である。ところが、現状では地方分権の意義、必要性がまだまだ住民に理解されていないので、まず、自治体内部でどうするのが一番よいか活発に議論することによって、議会の議論も活発になり、住民の関心も高まる。そうなれば、住民の意思が活発になり、これからは国や都道府県のせいにはできないので、住民の様々な声をどうまとめ、自治体としての政策を確立していくか、その仕組みに工夫を凝らさなければならなくなるであろう。」と発言された。

最後に今後のこととして、「今回の改革はいわば第1次の改革であり、それぞれの自治体が実績を積んだ後、自治体や住民の熱意によってもっと徹底した地方分権を求める声が出てくれば、その時には第2次の分権改革も必要である。

その際の課題として、国、都道府県、市町村の分担の見直し、組替えと法令の決め方の大綱化、そして最後に住民と地方公共団体、議会、首長との関係、選挙制度、首長と議会の関係あるいは直接請求や住民投票のあり方を抜本的に考え直す必要がある。」と述べて講演を締めくくった。

講演は全体を通して、簡潔で非常によくまとまっており、具体的な例示も交えた内容であったことから、一般の住民の方々にも地方分権の意義、必要性についてわかりやすいものであった。また、自治体関係者にとっても、地方分権の論点を整理し、認識を深め、今後の地方自治体のあり方について考える上でも大変意義のある講演であった。

 

パネルディスカッション〜分権型社会を築くために〜

パネルディスカッションでは、コ―ディネーターの恒松氏が、まず、地方分権の意義、必要性についての意識が非常に低く、今回の改革で大きく変わるいう声がきわめて少ない点を指摘した上で、?今後中央と地方の関係がどう変わり、自治体はそれにどう対応することができるのか、?地方分権は住民にどう受けとめられ、政治や行政にどういう形で積極的に参加を進めていくのかという2つのポイントについて議論が進められた。

 

地方分権に対する気運の醸成

最初に、遠藤町長から「今回の分権について自治体や住民からの盛り上がりが少ないとの批判がある。」との問題が提起された。

これについて、大山助教授は、これまでの分権論議に触れ「住民には政策決定の主体と行政サービスを受ける客体の側面があり、今回の改革は客体の面の話が多く、客体の面では、住民にとっては質の高いサービスが効率的に受けられれば、どこの地方自治体に行ってもよいわけである。」とし、宮崎氏は、「これまでは、住民が行政サービスを受けたいときなどに窓口が国なのか、県なのか、市町村なのか非常にわかりにくく、それは自治体の自己決定権の問題であり、また、自己責任意識の問題でもある。」と行政側の取組み、意識についての問題点が指摘された。

また、田代氏は、「日本人の地方自治への意識はまだ低い」と住民の意識の問題について発言し、「今回の分権改革を地方自治を勉強する機会にすればよい。」とし、そのために「今までの国の関与の実態を示すとともに、分権の効果についてより具体的に学ぶ機会をたくさんつくってほしい。」と述べ、行政側の積極的な取組みを求めた。

 

今後の課題

今後については、まず、宮崎氏が、「機関委任事務の廃止がただの名前の張り替えなら地方分権の意味がなくなる。」と発言後、大山助教授は「この改革を真の改革にするために、住民が政策決定の主体として自己決定していると実感できるシステムにどう改善していくのか考えなければならない。」とした。さらに、宮崎氏は、「決定権に伴う責任を果たす覚悟が行政、住民双方に求められる。」と権限と責任・受益と負担の関係について述べた。

 

国・地方の新たな関係の構築

中央と地方の関係については、中川副知事が「機関委任事務が廃止されて地方の自主性・自立性が強化されると、理想を実現するために自治体の責任は大きくなる。対等・協力を基本とした国・地方の新たな関係を構築するためには、政府、自治体が抜本的な改革を進めなければならない。」と述べた。また、都道府県と市町村の関係についても触れ、埼玉県においても、今後「埼玉県地方

 

 

 

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