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6. 基本構造の検討

昨年度の調査研究結果及びIMOの動向をもとに、以下の方針で二次試作品の基本構造を検討した。

6.1 自動排水機構の取り入れ

自動排水機構に関してのIMOにおける要件、試験方法についてその内容を検討した結果、基本概念として、繰り返しの使用が想定されるため、電気、ガス圧等のエネルギーを利用する方法は除外することとした。即ち、LSAコード(表1及び2参照)において、同救命いかだの装備要件として自動排水機構を備えることとされているので、膨脹時にのみ機能するようなものではなく、常時機能するものと考えられる。

但し、膨脹式救命いかだの他の構造からみて、なにも手を加えずに永久に機能することまでは要求していないと考えられる。例えば係留試験において、海上で浮遊中に一日1回の気室圧力の調整(必要に応じて手動ふいごにより空気を気室に追加する)が認められており、その状況下で各部が正常に機能すればよいと考えられる。

また、人員搭載時にも自動排水を要求するかどうかについては、上記LSAコード及びA.689改正案5.21の試験方法のいずれにも人員が乗った状態との記述はなく、この場合、通常SOLAS条約の解釈では人員が乗っていない状態のみを考慮すれば良いと考える。

基本的には、床面を水面から上げることが必要と考えられ、床面を上下主気室の中間に位置させる方向で検討を開始した。但し、その場合、水中膨脹や逆転膨脹時に床面下側に水が貯まることが推定されるため、それを防ぐ何らかの構造検討が必要である。具体的には、以下の構造について検討した。

(1) 床面を水面から上げる構造

当初、床面内の水を完全に排水するためには床面を水面から上げることが必要と考えられ、上下2気室の中間等に床面を移動した構造を検討した。この構造であれば適当な位置に逆止弁式排水弁を設けることにより、完全な排水が期待できるが、反面、水面に接した床面が存在しないための問題点が多々予想された。

例えば、逆転膨脹時に床面下部に多量の水が溜まること、漂流時の安定性が低下すること等。それらの問題点を解決する方法として、気室中間の床面に加え、最下面にもう一枚の床面を設置する等、様々な構造を検討したが総合的にいかだの主要性能を満足する構造は見いだせなかった。

(2) 床面を従来どおり下部に設置する構造

そこで原点に帰り、従来の構造(床面を下部に設置)を生かしてどこまで自動排水が可能かを調査するため、第1次予備試験を実施した。その結果、時間をかければ膨脹式の床でなくても内外の水位差がゼロになるまで排水すること、さらに、床気室を膨脹させればほとんどの水が排水される可能性があることがわかった。

 

 

 

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