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(3)氷海用船舶の基本性能に関する研究調査

将来、北極海航路を航行する船舶については、各評価点の軽重の選択により、INSROP国際協力事業において設定した船舶以外にも幾つかのシナリオが考えられる。大量輸送は船舶輸送の原点であり、極東アジア・欧州間の貨物輸送では、集荷情勢が許し、それに見合った航行支援体制が調えば、より大型船の航行が有利となることは明白である。そこで、シップ・アンド・オーシャン財団で実施した開発研究事業の成果である北極海航路最適船型を基礎として、より深い喫水を有する船舶の開発を試みたものである。船型設計、氷水槽における模型試験、波浪中試験等を行い、基本性能を把握し、航路、概略の氷況を設定、運航に関わる諸因子を検討し、運航経済性の評価を行った。ここで実施した運航経済性評価は、次年度に得られる航行シミュレーション結果の検討、及び比較を行う目的を兼ねたものである。

(4)実船航海試験に関する調査検討

北極海航路を真の商業航路として啓開する際の問題の一つに、航行に関わる様々な法制が、国際社会に馴染み得るものとして、期待、実現できるか否かがある。1995年8月に実施した、ロシア・ムルマンスク海運会社所有のカンダラクシャ号による実験航海により、北極海航路について多くの貴重な知見を得ることができた。

しかし、一方、外国船籍を有する商船の運航に際して、迅速かつ円滑な航行支援が得られるか、その手続き、手順はどうか、関係法制の適用はどうか、通航料等所謂タリフ・システムはどう運用・適用されるのか、海上保険はどうか、等の課題が残されている。そこで、外国船籍の商船を北極海航路に傭船航行させるための予備調査を行い、傭船の可能性について、傭船費等具体的な資料を得た。

(5)氷況の数値予測システムの研究

北極海航路においては、航行保全上及び経済運航上、航路前方の氷況予測技術及び予報システムの確立が必須である。本年度においては、衛星ベースの海氷データを用い、海氷移動・分布予測プログラムの開発、既存の海氷及び気象データを用いたシステムの検証・評価、地上局から送信される海氷及び気象データ、数値予測計算で得られた氷況データの可視化法について検討し、妥当性検証の一例としてオホーツク海における流氷について数値シミュレーションを実施した。その結果、本数値予測法が氷況予測システムとして十分活用し得るものとの結論を得た。

(6)関係資料の整理

北極海航路開発調査研究事業に関する国内、国外の活動を通じて、様々な貴重な資料、情報を入手、収集した。関係資料は今後更に増加するものと思われるが、現段階で一応の取り纏めを行い、次年度の最終総括作業の便に供した。

各国の専門家を担当者として、一つのシナリオに従って進行する航行シミュレーションは、各国それぞれに研究費の運用法、担当研究者の職分などに差異があることから、円滑、順調な作業の進展はややもすれば滞り勝ちとなる。計画通りの作業進捗は本委員会幹事会委員及び関係者の一層の努力によるところが多い。

INSROP事業成果の集約、統合については、サブ・プログラム集約の成果を勘案し、基本的な取り纏めの理念について、更に十分な審議を重ねる必要がある。

 

 

 

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