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第3章 船体着氷のメカニズム

 

着氷のメカニズムについては、既に数十年来各種機関で研究が続けられ、その成果は研究報告書や調査報告書として発表されている。

そこで、今回はこの分野に対する見解は既に発表済みの文献から構築することとし、実験的調査は行わないこととした。

収集した文献は、1962年から1995年にわたって発行されたものであったが、船体着氷に関する最も新しい文献は1989年発行のL.Makkonen6)の報告書であった。

最近の文献としては、着氷の研究報告書やそれに関連するものがあまり見られないが、これは近年の地球温暖化や日本漁船の極寒域への出漁回数が減っているための船舶の着氷事故の減少によるものと思われる。

従来からの研究により、船体着氷の主たる原因が、「海水のしぶき」と「気温」によるものであると言われていることから、船体着氷の発生機構を気温、船舶の相対風向・風速などの「気象・海象条件」と海域、船舶の航行による「海水のしぶき」、着氷する「材料の違い」について文献を調査し整理した。

 

3.1 着氷の発生機構  

日本海難防止協会の報告書5)に参考資料として、IMCO(政府間海事協議機構)の漁船安全小委員会に提出された、WMO(世界気象機構)の代表者で構成する特別部会での「着氷条件下における船の耐久性確保に関する漁船船長への勧告案」を掲載している。

この案は「1.着氷の原因と着氷が船の耐航性に及ぼす影響のあらまし」と「2.着氷条件下における船の耐久性確保に関する船長への勧告」の2章からなり、着氷の原因と着氷防止・除去技術についての勧告案が出されている。この勧告は1972年2月のもので古い資料ではあるが、この中から着氷のメカニズムを知ることができる。着氷原因に関する項目を抜き出すと表3-1のようにまとめることができる。

この勧告案によると、気象・海象条件(風と波)、周囲温度、船の起こす波しぶきを主原因に上げ、これらのファクターの関連と着氷の発生状況を説明している。

さらに、着氷の発生を引き起こす原因として、船の上部構造、船の運航、積荷状況、降雪、雨滴、海霧、海水の滞留を上げている。

また、周囲温度と風速の関係から100〜500GTの漁船における着氷量を推定している。

 

 

 

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