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表 5-3 微生物群集の環境圧モニタリング手法

1. バイオマーカー(生体分子分析)を用いる方法

2. 分子生物学的手法を用いる方法

3. 蛍光プローブとフローサイトメーターを組み合わせて行う方法

4. 顕微鏡観察

 

海洋における微生物群集のモニタリングでは、光合成藻類(藍藻、珪藻、緑藻など)が主となる。光合成藻類の存在は 6000 m の深海からも見いだされており、菌体は深海の圧力でも壊れないことが判明している。このため、生体成分を分析する手法、すなわち、培養できなくても測定できる手法であり、生きたまま保存することなく測定が可能となる手法に優位性がある。バイオマーカーを用いるならば、海水中の菌体をネットで集め、その場で凍らせて運べば解析は可能であるため、現時点では最も実現性が高いと考えられている。

顕微鏡観察を除いては、いずれの手法も研究開発が始められたばかりであり、一層の研究推進が期待されている。海洋における微生物生態系のモニタリングを行い、環境変化をいち早く捉えて早期警戒を行うためには、測定法の確立、測定機器の開発、モニタリング体制の構築、測定地点のバックグラウンド値および過去の変動データの蓄積など、乗り越えなければならない課題は多い

 

○ バイオマーカー(生体分子分析)を用いる方法

海洋生態系を構成する、4000 種とも言われる微生物群集の全体像を生体分子分析によって把握する。生物に普遍的に存在し、微生物群集の動態を反映すると考えられているものは次の2種類である。

◇ キノン

◇ 脂肪酸

いずれも、微生物群集からキノン/脂肪酸を抽出し、生化学的手法によって分析を行う。現在までの知見では、脂肪酸はキノンと比較して分子種が少なく変化が乏しいため、キノンを用いた手法の方が優れると考えられている。微生物群集のキノン分子は、ユビキノン、ロドキノン、ベンゾキノン、プラストキノンなどを合わせて 約 30 種類存在し、微生物相の呼吸や光合成の状態を知ることができるメリットがある。

生体分子の分析は簡便であるが、微生物群集の変化の詳細を知ることはできない。このため、環境圧変化の第一スクリーニングとして使用することが望ましく、バイオマーカーの分子種がバックグラウンドから変化した場合は、他の手法により詳細な分析を行うことになる。

 

 

 

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