日本財団 図書館


?物理的固定法

・液化二酸化炭素の海底投棄

この方法は、発電所で発生した二酸化炭素をその場で回収し、圧縮液化し、輸送パイプで投棄場所まで輸送し海底投棄する方法である。投棄場所としては沿岸地域の海洋や廃油田、廃岩塩坑が考えられている。全世界でこの方法を採用した場合、二酸化炭素の年上昇を32% 減少させることができると試算されている。しかし、液化、輸送などにかかるエネルギーによる発電コストの上昇、投棄後の液化二酸化炭素の挙動などの問題が残されている。

 

・深層海水のくみあげ、海洋層境界の撹拌、潜降流の利用

海洋の自然に存在するアルカリポンプを利用して二酸化炭素を吸収するためには、炭酸イオンが必要である。自然状態では、この炭酸イオンは海洋の上昇流れによって深層から運ばれてくる。これを人工的に行う方法が、深層海水のくみあげ、または、海洋層境界の撹拌である。また、海洋の大循環で海流が潜降する海域では大量の二酸化炭素を吸収していることを述べた。この潜降流を利用して二酸化炭素を海洋に吸収させる方法もある。

しかし、これらの方法は、現在ではアイデアの段階であり、具体的方法、実用性面、海洋環境に与える影響などを検討する必要がある。

 

?生物学的固定法

・植物プランクトンの活性化

植物プランクトンはリン、窒素、鉄などの栄養塩を与えることによって活性化される。従って、これらの栄養塩を海洋に大量に投棄することで、大量の二酸化炭素を吸収させることができると考えられる。しかしながら、河口・湾内域における赤潮被害に見られるように、むやみな栄養塩の投棄は海洋生物の生態系にどのような影響を与えるのか想像がつかない。したがって、炭素循環を始めとしたこれらの物質循環の海洋における役割を明確にしていく必要がある。

 

・石灰質生物の活性化

サンゴや石灰藻と呼ばれるプランクトンは炭酸イオンとカルシウムを利用して、石灰質(炭酸カルシウム:CaCO3)を形成する。これらの生物の死骸が海底に沈降することによって、二酸化炭素は海洋に固定されると考えられる。しかしながら、前セクションでも述べたが、石灰質を形成するときに炭酸イオンを使用することは、アルカリポンプを不活性化してしまうことである。したがって、石灰化による二酸化炭素の固定効果とアルカリポンプ阻害による放出の効果のどちらがどれだけ大きくなるか、検討、研究する必要がある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION