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2 現状の地球環境問題の把握

 

2.1 地球環境問題の全体像

 

地球環境は、大きくは、大気圏、海洋を含む水圏、大陸圏、そしてこれら3圏にまたがる生物圏の4つに分けることができる(これに雪氷圏を加えて5圏とする場合もある)。

大気圏では二酸化炭素 (以下、CO2と記す)やメタンをはじめとした温暖化ガスの増加による地球温暖化(これによって海面が上昇し水没地域増大の恐れや作物の耕作地域の移動等が考えられる)、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)による酸性雨(森林破壊等が考えられる)、フロンによるオゾン層破壊(紫外線増加による生物への影響)等の地球規模の問題がある。

水圏では都市内河川、湖沼・内海・内湾等の閉鎖性水域の水質汚濁(重金属・有害化学物質等、有機汚濁)や、地下水の有機塩素系化合物による汚染、化学物質(有機塩素系化合物等)・重金属・有機スズ化合物(船底塗料や漁網防汚剤として利用)・原油・浮遊プラスチック・放射性廃棄物等による海洋汚染がある。また、タンカー事故等による流出油自体の生態系への影響の他に、流出油処理の際に使用される界面活性剤(処理剤)の生態系への影響も懸念されている。さらに、熱汚染として、発電所からの排水による生態系への影響が挙げられる。

大陸圏では砂漠化、土壌流出等があり、生物圏では希少生物種の絶滅、生物多様性の減少と様々な地球環境問題を抱えている。また、有害化学物質・重金属の体内蓄積と生物濃縮による生物への影響(病気や奇形の増加等)や、この数年、農薬やトリブチルスズなどによる動物の繁殖への影響(エンドクリン)が問題となっている(内分泌の撹乱によって交尾を行わなかったり、排卵を行わない等、動物の繁殖力が落ちている)。さらに、干潟の埋め立てによって陸と海の接点であるエコゾーンが失われ、浄化能力への影響が懸念されその保全が問題となっている。

これまで地球は無限に大きく、汚染物質を海洋や大気中に無制限に放出しても全て受け入れてくれるものと考えられていたが、無限に大きいものではないことが明らかになってきた。また、地球の大気圏、水圏、大陸圏、生物圏はそれぞれの圏内で閉じているわけではく、物質やエネルギーを通して全てつながっている(例えば、水の循環、炭素循環、窒素・リンなどの天然物質の循環、人工化学物質の循環等)。従って個々の環境問題もつながっており、地球環境問題は、個別問題としてだけではなく、他の問題との相互関係も常に念頭において対策を進めていく必要があると考えられる。地球環境問題の相互関係を図2-1に示す。地球環境問題は、人間による自然物の直接的破壊や、特定の原因物質の放出等により生じるが、これらの影響は4つの環境圏を巡って再び人間社会に還元される。

 

?原因物質から見た環境問題

環境問題の原因物質には、自然環境に元々あるものではあるが人間によって過剰に増加してしまったものと、自然環境には元々ないあるいは極微量しか存在していなかった化学物質がある。前者の過剰自然物質と

 

 

 

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