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また、トロンヘイム市で開催された水産養殖業の展示会であるAQUANOR'97に参加し、欧州各国の養殖技術についての調査及び資料収集を行った。

1) Aquaculture Research Station(Tromso)

当研究所は、トロムソ市から車で約1時間の深く入り組んだ入江にあり8年前に設立された。同研究所はトロムソ大学と共同で魚の育成実験や魚病等の研究を行っている。研究員は約50名で研究テーマに応じて増減する。

養殖対象魚種は約20種類で、研究している魚種は、アトランティックサーモン、タラ、ハリバト(おひよう)、ターボット(ヒラメ)、ウルフフィッシュ(オオカミ魚)、マリンキャットフィッシュ、ランプサッカー、ウニ、北極タラ、北極イワナ、ピンククラブ(タラバ)等約20種のふ化、育成及び魚病等の研究を行っている。

研究所で使用されている用水は、大西洋に続いている湾内の約50mの水深からポンプで汲み上げて使用している。また地下水と川の水および汽水も利用している。研究所の水槽の形状は、円形循環水槽、長方形浅水水槽、角水槽、ビニール簡易水槽など種々の水槽で行っている。

長さ2m、幅1.5m、水深約10cmの長方形の浅水水槽では、ヒラメが育成されていた。数cm/sec程度の緩い水流があり、水中の残滓等の固形物はヒラメの動きで水中に浮遊し、その流れで下流側に集まって排出処理される。用水はパイプで外の浄化システムに接続され十分な酸素が供給されている。この水槽では20〜30cmのヒラメが3層に重なっており、この状態が成育には最適であり、2層では効率が下がるとのことであった。また、この水槽での養殖密度は約50%とのことである。

オオカミウオの水槽は、ヒラメと同様に長方形の浅水水槽で育成されており、蚕棚のように2から3段重ねで設置され、用水の温度をそれぞれ3℃変えて成長速度の実験を行っている。

ハリバットの水槽は直径約8mの円形の水槽で、稚魚から育成した約25kgの成魚を研究している。

北極タラの水槽は約4mの角水槽で稚魚から育成した50cm(5年物)が、北極イワナの水槽は直径4mで2,3,7年物(約40cm)が育成されている。

魚病の研究は、別棟でアトランティックサーモンとオオカミウオのワクチンの開発を行っている。ノルウェーでは抗生物質はほとんど使われておらず、ワクチンが主流であるが、それぞれの魚種の魚病に適用できるワクチンはまだ開発中である。

魚病研究室は、外部からの病原菌の侵入を防ぐため、入室時には手と靴の消毒を行うシステムになっている。また、魚の種類、魚病に応じて研究室は区画され、研究に使用した魚は薬品処理されて処分される。研究に使用した用水は加熱した90℃の高温水で2分間殺菌し、熱交換器(約3,500万円)で2℃にして海に放流している。設備の海水による腐食は問題ないとの説明であった。処理能力は20ton/minである。湾内の潮位差は約1.5mである

写真1にAquaculture Research Stationの全景を、写真2に同研究所のヒラメの浅水養殖水槽の一部を、写真3に同研究所のオオカミウオの養殖水槽を示す。

 

 

 

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