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準の下で、産・官・学が協調して、餌料の研究や各種技術の開発に勤め、産業レベルまでの形態を創り上げてきたことは認識すべきであろう。

 

陸上養殖における水処理技術では、残餌や糞等の懸濁物をいかに遠く、確実に取り除くかということと、魚の排泄に伴う溶存態有機物をいかに効率良く分解するかが重要なファクターとなる。前者は物理的な方法によるものであり、後者は微生物利用によるものであるが、佐野は「水産養殖と水」(サイエンティスト社、1985)及び月刊「養殖」(1997年10月号)でそれらの考え方を次の様に整理している。

イ)浄化すべき対象物(汚濁物質)は、飼育生物に起因するすべての排泄物と餌料の散逸物である。そして飼育生物の成長に伴い、汚濁物質の負荷量は増加する。

ロ)浄化作用は細菌を主体にした微生物が、飼育に伴い発生する排泄物等を栄養気質とした代謝作用によるもので、有機物の分解や窒素化合物の除去が行われる反面、微生物の同化作用により増殖が行われる。

ハ)これら微生物は好気性条件を常に必要としている。

ニ)飼育密度が高いほど汚濁負荷量の絶対量は多く、濃度も高くなる。

ホ)浄化作用の除去率が一定であれば、処理水中の残存物質濃度は汚濁負荷量で変化する。

へ)酸素の必要量は密度を反映する。

ト)汚濁負荷量の指標としては、有機窒素量が重要視されているが、BODも無視できない。

(BOD負荷量を体重の1/1000〜1.5/1000と推定)

チ)海水魚水槽での微生物の種類としては、次のものがある。

全従属栄養細菌、全嫌気性従属栄養細菌、デンプン分解細菌、セルロース分解細菌、タンパク分解細菌、尿素分解細菌、脱アミノ細菌(ペプトン→NH4+)、アンモニア酸化細菌(NH2+→NO2-)、亜硝酸酸化細菌(NO2-→NO3-)、硝酸還元細菌(NO3-→NO2-)、脱窒細菌(NO2-→N2)

微生物を利用して水の浄化を行う場合、魚類が排泄する有機物よりもアンモニアの排泄量に着目し、硝化反応を主体に考えるのが最近の傾向である。アンモニア態窒素そのものは、魚には害はないが、水質のPHが低いとガス化して有害となる危険性はある。排泄物中の有機物量に対するアンモニア量の比率は10分の1程度である。生物濾過における浄化とは、濾材表面に繁殖した微生物の有機物分解菌により、有機物が酸化分解されることである。

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