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3.5 最新の養殖技術(循環式陸上養殖技術)

 

前章まで我が国の海面養殖を中心に現状や問題点を述べてきた。養殖は水をどのように効率よく利用するかが原点であるが、また、その水をいかにクリーンにして自然環境に戻すかという視点が欠けていたことは認識せざるを得ない。本章では、様々な水の利用形態を整理しながら、最近、欧州等で発展しつつある循環式陸上養殖方法の理論や技術について紹介することとしたい。

 

3.5.1 水処理の各種理論と技術

(1)水利用と養殖形態

養魚における水の利用形態は国や地域によって特色があり、また、排水基準の強化や各種養殖技術の発展に伴い、さまざまな方式が行われているが、これらをまとめると下記となろう。

イ)流動状態の水を利用する方式。

小割生簀方式……一般的な日本の海面養殖

流水方式…………河川での淡水魚養殖

掛け流し方式……海水を陸上に汲み上げ、使用後排水。日本においては、ヒラメ養殖が代表的。北欧のサーモン陸上養殖

ロ)水の交流がきわめて悪い水域で、飼育と排泄物の浄化処理を同じ場所で行う。

止水式……………ウナギ、スッポン、コイ等の養殖

ハ)流動状態の水で飼育し、排泄物は専用の浄化部位にて処理する。浄化後の水を飼育用水として再利用する

陸上循環方式……主に稚魚の孵化・養成や、欧州におけるウナギ、ヒラメ等の養殖

(2)水の処理技術

一般的に水産分野で使用される確率の高い水処理技術は次のように分類される。

イ)大きさによる分離:スクリーニング、濾過(砂濾過、プレコート濾過、膜濾過)

ロ)比重差による分離:重力沈降、浮上、遠心分離法

ハ)拡散による分離:溶解、脱気、曝気

ニ)吸着:活性炭化学反応による処理、微生物膜による懸濁物の吸着

ホ)中和:PH調整

へ)酸化:酸素、オゾン、塩素、などの酸化剤による酸化。好気性微生物による有機物分解、アンモニアの硝化

ト)還元:亜硫酸ソーダー等の還元剤による還元。嫌気性微生物による有機物分解、脱窒素(硝酸、亜硝酸態窒素の)

チ)析出:水酸化剤、炭酸塩、燐酸塩など不溶性物質の生成

リ)置換:イオン交換等生物による処理

ヌ)吸収:植物による栄養塩類除去、微生物によるリンや有機物の吸収

実際には、これらの処理方法を単独もしくは複数組み合わせて水浄化が行われている。

(3)循環濾過による水の浄化の基本

近年、欧州を中心に陸上循環養殖法が急速に発展してきている。陸上循環方式による養魚法は、日本でも以前から研究はされていたが、実用面では欧米が先行している。その理由はいろいろあろうが、日本が家族型の小規模養殖の歴史を歩んできた時に、欧米では、厳しい排水基

 

 

 

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