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この時に有機態窒素はアンモニア態窒素に転換され、尿に由来するアンモニア態窒素とともに、瀘材面に棲息する硝化細菌により硝酸態窒素に酸化される。しかし、有機物分解細菌の活性度の高い濾層表面では硝化反応はあまり見られず、有機物濃度の低下した濾層内部において活発になる。有機分解で消費される酸素量は、分解有機物量の1〜1.5倍である。これに対して、アンモニアの酸化である硝化反応では、アンモニア態窒素量に対して酸化に必要な酸素量は3.5倍程度である。このため、生物濾過層に対する酸素の供給が十分でなければ浄化作用は機能しないことになる。特に、硝化作用の活発に行われる濾層内部への酸素供給は重要である。また、この濾過層処理ではリン酸が減少する一方、硝酸態窒素の蓄積が進むことにより、飼育水のPH低下が起こる。

通常、濾過層表面においては、ある種の有機物分解菌が有機物分解時に、硝酸態酸素を使用して有機物を分解する。この硝酸態酸素を呼吸に使用する細菌は硝酸呼吸細菌と呼ばれ、この脱酸素反応により、硝酸態窒素は分子状窒素(窒素ガス)となって、大気中に散逸する。これが脱窒素反応で、この作用により硝酸態窒素は失われて、水中の硝酸は除去され蓄積しない。循環濾過層が熟成したということは、有機物分解とアンモニア態窒素の硝酸態窒素への転換、及び脱窒素反応による硝酸の除去がバランスがとれて行われていることを示す。

 

さらに佐野は「経済性の高い陸上養殖施設設計のポイント」(月刊養殖1997 10 月号)で、以下のように述べている。微生物による浄化反応には、必ずこれら浄化微生物の繁殖が伴っている。有機物の分解においては、分解微生物に30〜50%の除去有機物が同化されている。つまり、この微生物は有機物負担量の30〜50%が毎日繁殖していることになる。

アンモニア態窒素を硝酸態窒素に変える硝化細菌は、その酸化で得られるエネルギーを使用して、水中の炭酸を主体にして菌体有機物を合成し、繁殖している。このような微生物類の繁殖は、浄化微生物膜を肥大させて濾過層の閉塞原因となっている。また、浄化微生物の増加は彼らの呼吸酸素量を増大させて硝化機能を低下させる原因にもなる。さらに、飼育魚量の急激な増減に伴う排泄物負荷量の変化もあって、浄化濾過機能を長期間安定状態に維持することは困難である。浄化機能を安定的に維持するためには、濾過層での増加微生物を適量に維持することが必要となる。そのために、濾過層の逆洗浄操作による剥離除去が行われる。逆洗浄機能を持たない濾過設備においては、濾材取り出しによる洗浄がなされる。

 

生物濾過器の設計においては、濾材と濾材表面積を十分に保つことが大切なことである。つまり、単位濾材表面積当たりの排泄有機物負荷量が低いほうが、濾材上の微生物膜の肥大速度が遅くなり、濾過閉塞が発生し難い。逆に、単位濾材の表面積当たりの有機物負荷量が高いと、すぐに閉塞し、濾過層の逆洗浄頻度を高めねばならなくなる。

濾材表面積当たりの有機物負荷量は、5〜10 g/m2・日にもできるが、これでは二、三日に一度の濾過層の逆洗浄が必要になる。これに対して、1g/m2・日程度の有機物負荷量で設計すると、逆洗浄頻度は10日程度になる。濾過層の安定状態をできるだけ長期間保つためには、有機物負荷量を0.5g/m2・日程度にしておくことが望ましい。

 

 

 

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