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昭和45年に制定された海洋汚染防止法や水質汚濁防止法の改訂に加え、種々の規制が強化されてきてはいるものの、平成8年に海上保安庁が確認した海洋汚染の発生件数754件の内、故意による油やゴミ等の排出によるものが、265件もあったということは悲しい事実である。

3-1-5図我が国の海洋汚染発生状況

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ハ)地下水

地下水は重要な水資源であるが、昭和50年代後半より有機塩素系化合物による地下水汚染が顕在化している。これらは、多くの場合、有害物質やこれらを含む排水、廃棄物の不適切な管理が原因と考えられている。また、多肥集約農業や畜産廃棄物、生活排水等が原因となって硝酸性窒素による地下水汚染が明らかになり始めている。

ニ)水環境保全対策

水環境の保全は、水質汚濁の防止、水辺空間の利用の観点からの対策が中心であったが、水環境から享受する様々な恵沢を考えると、水質だけでなく、水量、水生生物、水辺地等の様々な要素があり、それらを包括的かつ総合的にとらえ、対策を推進していくことが必要である。

水質汚濁は、下流への影響や内海の汚染に見られるように広域的な影響をもたらす問題であるとともに、有害化学物質により数十年後に健康被害が生ずる場合もあるなど長期的な影響をもたらす問題である。また、一旦被害が生ずるとその回復は極めて困難であり、不可逆な影響をもたらす問題でもある。

海水の富栄養化現象は、日本の沿岸のいたるところで生じているが、とりわけ大都市近傍の内湾域(東京湾、伊勢湾、大阪湾、広島湾など)で顕著である。海水中には通常は窒素とリンを除いた栄養物は十分にあり、生物の増殖には窒素とリンが不足がちである。しかるに現在では、人間活動の急激な増大に伴い、閉鎖性海域などへの窒素やリンの負荷量が著しく増加し、水質を富栄養化させる、その結果として植物プランクトンなどが大増殖し、時には赤潮現象を引き起こし、莫大な漁業被害を発生させる。これら両面からの影響で海水中の有機物量(CODとして測定されることが多い)が増大し、水質の有機汚濁を引き起こす。この水質の悪化は、食物連鎖系を通じて次第に形を変え、最終的にはその一部は海底まで

 

 

 

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