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う2つの要素を持つ。この方法論の中で特徴的なことは、IDEF3がIDEF0のような「モデリング」手法ではなく、「記述」獲得手法であるということである。

「モデル」は、ある目的の下に現実世界を模倣するために設計される、理想化されたオブジェクト、属性、関連という要素によって構成されるものを示す技術用語である。一方、「記述」とは経験的観察の記録を示す技術用語である。すなわち、「記述」は経験や観察から引き出される知識の蓄積である。

「モデル」の長所は、限定された目的の下で対象となる系を迅速にしかも容易に評価できるという点である。しかし、この長所はモデル構築時に設定した目的によって限定される。すなわち、あるモデルは別の目的に対して通常は流用できない。一方、「記述」は特定の個人の経験などに基づく事実の記録であり、その目的とするのは個人の持つ知識を陽に表現蓄積するとともに、各個人間での認識の相違を把握するということである。そのため、「記述」においては主体によって表現される知識が異なる可能性があるものの、各々が経験によって獲得した知識は漏れなく表現される。しかし「モデリング」では目的という制約条件の下に対象を表現するため、目的の設定によっては表現されない知識もある。

IDEF3がプロセスに関する知識を表現するのに向いているのは、上述のように「モデリング」ではなく「記述」手法であるということによっている。

しかし、IDEF3は「モデリング」を行えないということではない。IDEF3が「記述」獲得手法であるというのはあくまで方法論としての側面であって、プロセス記述言語という側面から見た表現能力としては、十分モデルも表現可能である。基本的にIDEF3が扱う対象は様々な分野のビジネスプロセスであり、その表現を担う言語に必要とされるシンタックス及びセマンティックスは、「モデリング」にしろ「記述」にしろ変わらないからである。

ここでは、IDEF3にはプロセス記述獲得のための方法論と、プロセス記述言語という2つの要素があることを述べた。方法論の特徴としては、IDEF3は「モデリング」を行わずに「記述」を行うという点にあり、このことはプロセスに関する知識の獲得を行うのに効果的である。しかし、プロセス記述言語としてのIDEF3は「記述」と同様に「モデル」も表現可能である。

(3) IDEF3プロセス記述言語

ここでは、プロセス記述言語としてのIDEF3の特徴を述べる。IDEF3が開発された当初、望まれる機能として以下のようなものがあった。

・ビジネスプロセスを統一的な記法で表現する

・プロセスにかかわるオブジェクトの生成、消滅、変化等を管理する

・プロジェクト進捗管理を支援する

業務分析を効率的に行うためには、様々な分野の作業者が有しているビジネスプロセスに

 

 

 

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