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上げたい。

皆さんの一番大きなご関心は、今の道路を使った交通をどうしたらいいかということだと思う。今、皆さんは自転車の段階からバイクの時代になってきていると私は拝見した。私の経験では、皆さんは今後、乗用車を乗り回すようになり、乗用車は、私の計算では、バイクの大体4倍、ブレーキが効かないということを考えると6倍から8倍の面積を必要とする。今、仮にバイクの半分が乗用車に変わるとした場合、多分バンコク以上の大混乱が起こると思われる。その結果、都市に排気ガスが充満する、交通事故による死者、けが人が増える。その結果、企業はこの都市から逃げ出そうとするようになるのではないかと思われる。それから新しく来ようという外国企業も、交通だけの問題ではないが、他の問題もあって、益々来てくれるのに消極的になると思われる。

ご質問のように、確かに鉄道の建設には大変お金がかかり、しかも長い期間を必要とする。そのために、さしあたってこれならばできそうだという考えが1つ浮かんだ。道路における自動車、バイク、それから自転車、歩行者の通行が、今、大変混乱していると私は思った。皆さんはバイクでできるだけ前へ出ようということで、無理に進路を変更しようとしたり、追い越しをしたり、かなり混乱する交通になっているようだ。もし、自転車やバイクが自分の進路を守って同じスピードで走れば、道路の容量は今の2割から3割は増えると思う。これを守っていただくには、国民の皆様に協力というか、ルールを守ろうという啓蒙運動が必要ではないかと思われる。

道路交通で気になるのは、信号機があまりにも少なく、かつ小さい、見にくいということである。日本では、交通違反の場合の罰金を使って、信号機や安全のための施設をたくさん整備している。現在、比較的短い期間でできる道路交通の話を申し上げた。

2つ目の提案は、思い切って乗合バス、それも立派なバスを大量につぎ込むことである。乗合バスはどうしても路線が限られるので、乗るまでに歩かなければならない。ところが、バイクや自転車になれた方はなかなか歩かない。日本でも同じような問題があった。バスはかなり整備されているが、皆さんが乗らないために、バス会社の経営がますます悪くなってきている。それで運賃が上がり、人々はまた自動車や自転車やバイクに戻ってしまった。

そこで私の提案としては、運賃を必ず安くすること、バスは冷房つきの非常に快適なものにすること、路線網は非常に密にすること、この3つが必要条件だと思う。特に広い道路では、バスが最も速く走れるように専用のレーンをつくることが必要だと思う。

冗談になるが、私はこちらの国へ来て、センターラインという意味にはちょっと別な意味があるということに気がつきました。日本では、センターラインというのは、そこを越えてはならない線だと私は思っていた。しかし、この国では、センターラインというのは、そのセンターラインの上を走れという意味ではないかなと思ってしまった。今の道路状況でもやれることは幾つかあると思う。

長期的な話としては、結論は、今まで他の先生もおっしゃったように、これだけの大都市になったから、都市交通は、鉄道が主として責任を持たなければならないと思う。ホーチミン市の人口、広域的にいうと300万人と伺っているが、日本でその場合ですと、大体都心に入ってくる鉄道路線が10本から12本必要であると思う。しかしそうは言っても、これは大変お金がかかるので、第一段階では、今の鉄道の強化、つまりせめて道路との平面交差をやめて地下にするか、あるいはできれば高架にするということで、道路交通との交差をなくす。これによって、安全を図りスピードアップができると思う。

6車線または8車線あるような広い通りには、下に地下鉄、上に高速道路をつくるという方法もある。東京でも幾つかの例があるが、これによって建設費をかなり安くすることができたようである。

鉄道を引くには、一つはもちろんお金の問題があるが、その前に相当綿密な計画をつくらなければならないと思う。そのためには、非常に具体的な都市計画、街づくりの計画と一緒に考えなければならないと思う。場合によっては、現在住んでいるたくさんの人々に動いてもらって、そこに広い道路あるいは鉄道をつくるということをやらなければならないと思う。私の今までの経験では、これだけの都市の鉄道というのは、やりようによっては必ず定位をする、長期的には事業として成り立つものだと思う。それによって、この都市が生き返ることは必ず可能だと思う。しかし、今のまま放置しておくと、先ほどの今野先生のご意見のように、非常に先が暗いような気がする。

先ほど、ホーチミン市の技師長様は、地下鉄を整備する地区を限るというお考えをお示しになりました。私は、建設するとしたら地下鉄は郊外、例えば、中心部から100キロぐらいの遠いところから駅を1キロ間隔に建設し、都心を抜いてまた反対側の郊外に抜けていくのが一般的なルートと考えられるので、いわゆる地下鉄整備地区というものを決める必要はないと考えられる。要は、計画段階でいかに道路計画とか、公園の計画、住宅の計画と一緒に整合性のある計画がつくれるかどうかということにかかっている。

 

6. 閉会(ホーチミンセミナー)

ヴィエトナム運輸開発戦略研究所 レ・クア南支局長

 

お集まりの皆様、ヴィエトナムと日本の友人の皆様、本日は大変内容の濃いセミナーを開催していただきました。このセミナーは我々にとって成功で、日本側からも色々な情報が得られたと思います。時間をかけて遠路日本から来ていただき、貴重な研究材料を我々に紹介して下さった講師の方々に厚くお礼を申し上げます。

日本は天然資源に乏しいことは私たちは知っているが、状況に合った良い開発政策により、現在も経済発展が進んでいます。ヴィエトナムが経済発展を進めていく上でのお手本とさせていただきたい。

ホーチミンはハノイから1,700Km以上離れていますが、日本の皆様方が快くホーチミン市においてセミナーを開催して下さったことに感謝致します。今後も、日本とヴィエトナム双方の発展を願って、共催のセミナーを開催できれば良いと考えています。日本の皆様がホーチミン市に滞在されるのは短い間ですが、ヴィエトナム人を代表して、日本人の講師の先生方をはじめ、日本からお越しいただいた皆様方のご健康とご健勝をお祈り致します。また、別の機会にお会いし、皆様方のすばらしい経験と知識を教えていただければ幸甚です。

主催者を代表して、本日のセミナーの終了を申し上げます。

 

 

 

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