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◆質問:ホーチミン市建築技師長

ヴィエトナムの都市交通システム整備の方向性の質問に対する、東北大学稲村肇教授の回答については同意見である。ホーチミン市では、公共交通輸送の諸問題について、最も緊急とされるべきものから解決しなければならない。地下鉄の建設の必要性を言及されたが、ヴィエトナムの経済力ではすぐに容易に建設できるとは考えにくい。地下鉄を建設するための特別区を作る必要性はあるのか。

 

◆回答:国際観光振興会 井山嗣夫会長

都市交通の一般論について述べた後、ホーチミン市のことについて、例えば、鉄道から先に導入するべきとか、どのような方策をとるべきだという話をする。

日本の失敗した経験から始める。

日本は1945年に戦争が終わって、鉄道も道路も随分破壊された。しかし、他の輸送手段がなかったために、日本は鉄道の整備をまず第一の義務と考えて鉄道を一生懸命整備した。その結果、都市交通の面でも、東京あるいは大阪、名古屋という大きな都市は、世界でも最も鉄道を利用する都市となった。例えば東京の場合、通勤、通学に鉄道を利用する者が50%、自動車あるいはバイク等を利用する者が50%である。ちなみに、東京圏の場合、1日4,000万人の方が鉄道を利用している。その地域の人口が3,500万人なので、1人1日1回は鉄道を利用している計算になる。

では、具体的に鉄道についてどんなことをしたかというと、大きく分けて2つある。

1) 今まである鉄道の大改良を行った。

?具体的には、線路を非常に丈夫なものにしたり、橋をかけかえたりして、まずスピードアップを図った。?列車本数を増やした。?違う企業体の鉄道を相互に連絡して、いわゆる相互直通運転を行った。ご存じのように日本では、国鉄、市が経営する鉄道、純粋に民間の鉄道と大きく3つの鉄道があります。それらの鉄道を、できるだけ間に地下鉄を入れるなどして結びつけて、郊外から都心、さらに郊外へと、都心部を通した直通運転をしたということが一番の特徴といえる。

2) 新しい鉄道をつくった。そのうちの1つは、地下鉄をつくったことである。今、日本では東京圏、名古屋圏、大阪圏で、約500キロメートルの地下鉄を1950年以降に建設した。そのほかに、今まである路線を大改良して高架にした。このように、日本の大都市の場合、通勤、通学者が多過ぎて、鉄道に頼るしかないという結論が早くわかってきた。もしこれらの人々を乗用車で運ぼうとすると、街を全部道路にしなければ運ぶことはできない。ということは、街はなくなるということである。

そこで、ご質問と関連して、私はまだヴィエトナムのハノイ、フエ、ダナン、それとホーチミン市しか拝見していないので、乏しい知識であるが、若干の問題点を申し

 

 

 

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