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4. 拡張機能

 

減圧後、E/Aは1.95±0.35から1.65±0.42に軽度低下したが等容拡張期時間、減速時間には明らかな変化を認めなかった(図9)。

 

5. 頸動脈血流

 

脳血流の指標として用いた血流速度、血管径、血流量はいずれも増加したが、その程度は減圧直後の方が大であった(図10、11)。

 

考察

低圧低酸素状態において心拍数の変化は必ずしも一定していないが、血圧は末梢血管拡張作用により一般に低下することが知られている。今回の実験では血圧と心拍数はともに減圧直後、一旦、上昇してから低下した。また、復圧後5〜10分の時点では依然、低下傾向を示した。この減圧直後の上昇は精神的ストレスの影響であり、また、復圧後の低下持続は末梢血管拡張作用の持続によるものと考えられる。一方、酸素飽和度は減圧直後から低下しはじめ、10000フィートで15分経過した時点で最も低値(86±3%)を示した。一般に、血中の酸素分圧あるいは飽和度に影響を与えるのは大気圧、肺胞毛細管酸素分圧較差、毛細管酸素拡散、肺胞換気、心拍出量、赤血球通過時間1)などであるが、健常例では大気圧の影響が最も大きい。大気の成分は窒素と酸素からなり、大気圧の減少とともに酸素分圧も低下する。今回、我々が行った10000フイートでの報告は少ないが、これまで、高度と血中酸素飽和度(分圧)の関係について6000フィートで70±6mmHg、8000フィートで62±2mmHg2)、さらに軽い運動負荷を行うと54±7mmHgまで低下することが報告されている。旅客機では機内圧力を6000フイート(2000m)以下になるように加圧されるため、実際には酸素飽和度で86%以下になることはない。しかし、心肺機能が低下している場合には予想以上に低下する可能性を含んでいる。

図12に我々の施設において心臓移植のためドイツへ飛行機移送した2

 

 

 

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