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最初は、アパートのような外階段として自立性の高いものを作ろうとも思っていましたが、ある親から不安であるとの指摘を受け、階段は内部としました。この他、親の希望や仲間の希望を取り入れて設計を進めたとのことです。例えば、最終段階の内外装の色選びなどは、居住する仲間で決めたものです。

開設の1年前には、ほぼグループホームに入居する5名が決まっていたので、彼らには、少しずついろいろな既存のグループホームで体験入居をしてきてもらうなどといったことも並行して進めてきました。

 

3. 建物について

 

できあがった建物の形態(構造)は、軽量鉄骨2階建の一戸建住宅です。大家さんの住居が壁を共有して一体的に隣接していますが、建物内でのつながりはありません。グループホームと大家宅へ、それぞれのアプローチを持っています。大家さん夫婦と4人の入居者は、平日は毎日、作業所で顔を合わせるので、できれば大家さんの住居は別棟にしたかったのですが、取得した土地が狭くて実際は分離することができませんでした。幸い、敷地への道が2本あったので、それぞれに利用することができ、建物は一体だがアプローチは独立したかたちになっています。このグループホームでは、大家さんから入居する仲間が部屋を借りている関係で、大家さんに払う家賃総額は月42万円です。

全ての居室に、ミニキッチン(ミニ冷蔵庫、電気コンロ付)、ユニットバス(トイレ、洗面所付)がついています。ミニキッチンでは、冷蔵庫があるので他人に気兼ね無くいつでも飲み物を取り出すことができるし、簡単な即席ラーメンなどを調理することもできます。 トイレには入居者からの希望によって、ウォシュレット設備を付けています。浴室が各部屋についているので、入浴する時間は自由ですが、たいていの人は仕事から帰り、食事前に入浴をするという豊かな生活が定着しています。

共用空間としては、1階の食堂に大きなテーブルが置いてあり、多目的に使うことができます。ここにはテレビは置いていませんが、もしテレビを置いたらみんながそちらに集中してしまい、団らんができなかったのでは、という意見もあります。ここは、玄関からオープンにつながっていて、外出、帰宅時の仲間の様子がわかることが、共同生活を行ううえでの利点ともなっています。当初、玄関と食堂の間を壁で仕切ろうかとも考えたこともあったそうですが、やはり直接つながる方が良いだろうということになり、それが成功しています。

2階にも共用空間があります。これは階段をあがったところ、4室ある居室の前の広いスペースで、洗濯機や乾燥機、大きな洗濯干しとテレビが置いてあります。ここでは、数人でお喋りをしたり、洗濯をしながらテレビを観賞するという場になっています。

 

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これらの設計の工夫などの多くは大家さんの提案ですが、開設前にいろいろなグループホームで体験入居した仲間たちの体験談や感想が、貴重な意見として積み重なって生かされたわけです。まさに運営側と居住者が一体となって共同作業として「グループホーム未来」を作り上げてきたということが言えるでしょう。

 

(この報告は、研究室の学生、豊嶋順子、平賀由紀夫両氏によるものをもとにしました)

 

 

 

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