日本財団 図書館


第2章 グループとしての「住まい」

 

グループホーム未来

 

大原一興(横浜国立大学工学部 建設学科建築学教室 助教授)

 

1. 自由に行動、楽しく生活

 

「グループホーム未来」では、その基本的な考え方として「『自由に発言し、自由に行動し、楽しく生活する』ことが保障される」ような運営を行っています。

このことは、例えば、運営側からではなくあくまで仲間からの提案によって、週1回のミーティングを始めることになったことや、各自の自主性を重んじて、掃除、洗濯は基本的に各自が行うことにしていること、また家賃も各自が郵便局から運営委員会に振り込む方式をとっていることなど、自立性を尊重した共同生活の仕方、一つひとつに表れています。もちろん、自分の部屋は自由に使い、友人知人も訪ねてきます。

ここに暮らす仲間は、男性4名、女性2名で、すべて20代半ばの若者6名です。各自の自由が尊重されていて、例えば食事は自由にとることができるのですが、実際は一緒に楽しく会食をしています。作業所へ通う男女2名ずつは、週に2回、自分たちで弁当を作るなどをして、共同生活の長所も最大限生かしています。

 

2. 開設までの経緯

 

開設は、平成9(1997)年4月1日ですが、もともと地域作業所の所長をしている大家さんが、自分の住む住宅と併設してこのグループホームを作ったわけですが、その開設にこぎつけるまでには紆余曲折がありました。もともと大家さんは電気系の会社で障害者を雇用していましたが、その後、地域作業所の運営に専念するようになり、長い障害者とのつきあいの中から、彼らの生活にゆとりの無さを感じ、また障害者だからといっていつまでも親元で親の援助を受けているのはおかしいのでは、と思うようになったことが、地域生活の場としてのグループホームを作ることになったきっかけです。

横浜市では、グループホームへの運営補助として、A型とB型の2種類のタイプがありますが、当初、大家さんはB型で設置することを考えました。この制度のA型は地域や親の会、作業所などの有志からなる運営協議会が運営するもので、これに対し、B型は、社会福祉法人が運営するものです。大家さんは、まず、B型であれば、運営は法人が行うので安定しており、それに対する援助も保障されるだろう、A型の場合は市からの助成金というかたちでお金がつくので、将来、助成がなくなる危険性もあるのではないか、と思ったわけです。グループホームは、障害者にとって生活の保障基盤であるとの考えに立ち、運営の安定性を重視したのでした。しかし、実際、いくつか周辺にある、社会福祉法人が運営する施設を訪ね歩き、大家さんの考えるグループホームについて話し合ってみましたが、どうも自立や生活の豊かさなどといったことに対して、大家さんの要望とは完全に一致しませんでした。そこで、個人でA型のグループホームとして設立することを決心したわけです。このように結果的に、A型として開設し補助を受けて運営していますが、その運営委員会には周辺2ヶ所の施設の職員に運営委員として入ってもらっています。

開設準備は、まずは土地探しから始まりました。既成のアパートなどを改築するだけではなかなか思うものが望めないため、更地に新築することが必要なためです。大家さん夫婦が、グループホームの隣に住む、ということと、仲間の居室には自立性とプライバシーを重視し、専用のキッチン、トイレ、浴室をつけるなどといった点が、設計の条件となりました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION