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戸田ホーム

 

林 章(愛知工業大学建築工学科助教授)

 

1. ボランティアもバックアップしています

 

「戸田ホーム」を運営する社会福祉法人愛光園の地域福祉への取り組みには、オープンなシステムを指向しているという特色があります。同法人の運営する愛知県心身障害者小規模授産作業所「ひかりのさとファーム」(近いうちに増員して通所授産施設になります)には、グループホームで生活する知的障害者が働いていますが、その中にはほかの法人が運営するグループホームの住人も混じっています。職住分離を空間だけでなく法人レベルで実施している例は、わが国では稀有といってよいでしょう。

現在この法人が運営するグループホーム・生活寮は全部で5ヶ所です。その運営面での最大の特色は、バックアップのメンバーがバックアップ施設の職員に限定されず、その中に地域のボランティアが組み込まれていることです。世話人を住人に対する第一レベル支援スタッフとすれば、ボランティアは第二レベルの支援スタッフであり、ボランティアでも支援しきれない場合にバックアップ施設が第三レベルの支援を行います。

バックアップ施設は、形式的には入所更生施設「まどか」ですが、実質的には、同法人が運営する知多地域障害者生活支援センター「らいふ」(制度外の活動組織)がその役割を果たしています。生活支援センターをつくった最大の理由は、専従のバックアップスタッフの必要性です。施設職員の時間外勤務などを前提とするならば、バックアップできるグループホームの数は、自ずと限られてきます。それでは障害者の求めに応じて計画的にグループホームの数を増やしていくことはできません。「ひかりのさとファーム」の前施設長で、「らいふ」の現所長である山田氏は、当初この問題に頭を悩ましていましたが、法人の最初のグループホームである「戸田ホーム」でのボランティアの関わりを見て、専従スタッフを置くと同時に、彼らを最大限有効に機能させる方式として現在のシステムを考えついたと言います。

 

2. ボランティアからご近所づきあいへ

 

もちろんボランティアが一朝一夕でバックアップスタッフになれるわけではありません。グループホームの住人との日常的なつきあいを積み重ねることで、はじめて可能になったといえるでしょう。「戸田ホーム」に対して現在10名を超すボランティアが支援していますが、彼女らの多くがグループホーム開設以前は、同法人の施設のボランティアをしていました。その意味ではこのグループホームは恵まれたスタートを切ったといえます。しかしこの人材を単に継承しただけなら今回の「戸田ホーム」はなかったでしょう。

ここでのボランティアの関わりは、障害者の生活の質を豊かにするといった通常の形態を超えています。第一に、ボランテイアの主体が夫人から家族全体に拡大したことです。花見などの遠出の際は、ご主人が自分の車で送迎しつつ参加する。お嬢さんは、グループホームによく遊びに来る友達であると同時に買い物や映画などで外出する際には、ガイドヘルパーをかってでる。息子さんは、将棋の好きな住人の将棋相手をつとめる。等々。

 

 

 

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