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(2) グループホームの職員体制について

ホーム開設の経緯から、援助は原則として365日24時間体制(ウィークディの日中は地域作業所を利用)となり、そのため職員は常勤2名の雇用とアルバイト・ボランティアを随時お願いすることになりましたが、職員の充分な身分保障ができない状況です。

補助金収入に利用者からの支援費用(月1万円)を徴収しても、年間で人件費約800万円、100万円程度をアルバイトにあてると、一定基準の給与は何とか払えますが、夏期及び年末手当は合わせて3ヶ月程度にしかなりません。

試算では、常勤職員3名、ないしは常勤職員2名+非常勤1名を雇用できれば、何とか365日の支援体制が可能となると思われます。人件費に見合った補助金という観点から、国や自治体による運営費補助は、既存の法内施設への措置費(事務費)とのバランスの上で考慮すべきではないでしょうか。今日のグループホームでは生活の支援が比較的少なくてすむ人であっても、365日同居型の支援体制を組むには、現在の補助金では職員の確保は難しいのです。そして、このことがグループホーム制度の進展、ひいては障害者の地域生活の可能性を狭め、家族による障害者の施設入所志向を強めているものと思われます。

 

(3) グループホームの地域生活住居としての性格

このグループホームは利用者が住んでいた地域での開設・運営であったことから、近隣地域の有形無形の支援体制が前提となっています。またその一方ではホームの存在自体が地域の福祉的力量を高めているとも言えます。

先に記したように、運営委員会には地域の代表的な人が数多く入っており、運営の細かい部分を支援する事務局も地域の人達が支えています。ですから入居者は日常生活上きめ細かな支援を受けることができます。加えて、第三者機関である「在援協」の支援、通所する地域作業所や関係する施設の支援を設け、このようなネットワークを利用して、このグループホームは運営されているわけです。

このグループホームは地域の支援を必要としていますが、一方、ホームが設置運営されたことによって、地域で更に新しいホームの設置が計画されたり、地域住民の関心が高まるなどの効果も及ぼしているのです。

 

5. おわりに

 

親の死亡した後の姉弟の暮し方について、親が希望する施設入所にかえて、不完全ではありますが本人の希望する地域生活の継続を目的として、地域住民を始め、行政、法曹関係者、福祉の専門家、そして「在援協」のような機関が連携してこれを実現した例を報告しました。

様々な矛盾を抱えながらも、何とか障害がある本人の望みがかなえられたことは一つの成果であったと思います。

今後、障害者の家族にとっても、少子化傾向があり、障害者本人が土地や家屋を相続する権利をもつ場合も増えてくると思われます。こうした場合、住みなれた家屋での地域生活の継続に向けて、土地や家屋の相続が、そこでの生活を希望する障害者にスムースに行われ、しかも、その生活を継続するための支援がすみやかに準備できる必要があると思われます。

そうした目標の実現に向けて、実質的な効果をもつ成年後見制度の一日も早い確立と、グループホーム制度の充実、強力な生活支援システムの構築が求められていると考えます。

筆者は現在、社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会(親の会)に勤務するものですが、一市民としても、知的障害者の豊かな地域生活の実現に向けて、関係機関のさらなる努力を強く望みたいと思います。

 

 

 

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