日本財団 図書館


ホーム運営のキーポイントを握る世話人が運営者としての主体的立場か、単なる派遣的雇用者かでは、取り組み方への意欲まで違ってきかねません。「地福協」の生活ホームが独善的にならないためにも、また、法人の生活ホームがミニ施設化しないためにも、川崎市制度は同一基準、同一労働条件、同一賃金体系となるように検討してほしいと思います。

いったい、生活ホームの世話人の身分はどう位置づけられているのでしょう。生活ホームを家庭(家族)同様とし、母親のような役割と考えている人、共同生活の中でのアドバイザーと考えている人、人生の伴走者と考えている人、アパート管理人と位置づけている人……その姿勢は様々で、そんな世話人の個性が生活ホームに反映されているようです。しかし、メンバーの想いが同じであるとは限りません。「母親のようだ」との想いから自分の気持ちを世話人に伝えても、「あなたのお母さんだと80歳になってしまう。私はまだ若い。」といわれ、その想いがしぼんでしまう人もいるでしょう。「ババア、靴下はかせてくれ。」と甘えて怒られる人もいれば、一緒に入浴し、世話人のせり上がった腹をみて「同じような腹だから僕たち兄弟だね」とうれしそうにいう人もいます。こうした様々な場面で、きっとお互いがかけがえのない大切なつながりを感じ合っているのでしょう。

世話人の高齢化が進んでいます。経験を生かすためにも若い人との2人体制の実現を切に望みます。

 

(4) 利用者の立場から

最後に、前述の集会で、生活ホームで6年暮らしている53歳のOさんからの発言がありましたのでこれを紹介します。

「昨夜、一緒に住んでいる人とケンカをしてしまった。この人とはいつもうまくいかない。本当はホームを出て一人暮らしをしたいのだけれど、身体が弱いので就職できず、お金もないのでそれができない。自宅に戻ろうと思っても、親はいなくなり兄弟家族には遠慮がある。やっぱりこのホームかなと、世話人さんと話しています。」

このようなOさんの気持ちにどのように応えられるのか。世話人をはじめ、運営側の努力を期待したいと思います。

生活ホームでの毎日が、暮らす人たちの夢を育み、私の人生良かったと思える楽しい日々であることを願います。そして、そのようなホームがポストの数ほど増えることを念願しています。不器用ではありますがユーモラスなホームのあたたかさに刺激されて、地域が活性化していくことを信じます。川崎市の行政に携わる皆さんには毎年申請された生活ホームがすべて認可できるように積極的な予算確保を期待します。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION