日本財団 図書館


第一は24時間緊急時に即応できる援助体制がとれることです。人の暮しというものは予想外のできごとが起こるもので、特に、利用者や世話人の急病・事故などの緊急時に即座に対応できる体制をつくっておく必要があります。

第二の役割は、専門性のあるアドバイスができることです。障害についての知識や健康・福祉情報、日頃から地域の社会資源にも精通していて、必要な時に情報を提供できなければなりません。

第三の役割は権利擁護です。人間として当然あるべき権利を十分に行使できるように、また障害による不当な差別を受けないように配慮しなければなりません。例えば労働災害、不当解雇、財産管理上の問題、サラ金、セクハラ、キャッチセールスなどのトラブルの解決があります。

このように、地域生活のバックアップはとても広範囲で施設のアフターケアの範疇には収まるものではありません。緊急体制一つをとっても、コーディネーターが1人でサポートするには限界があります。したがって地域全体でバックアップシステムをつくる必要があるのではないでしょうか。

 

(3) これからの地域生活援助

生活寮援助センターの日常業務の他に、これからのバックアップシステムがしなくてはならないことを列記してみました。

?@利用者の生活が充実するために

(a) 余暇活動の情報提供と企画

(b) 本人活動や失業者の溜まり場づくり

(c) 利用者と家族への個別相談

?Aマンパワーの養成

(a) 世話人確保と養成

(b) 代替え職員の派遣

(c) ホームヘルパー・ガイドヘルパーの紹介

?Bハウジング

(a) 住宅情報のキャッチ

(b) 住宅の調査と借上げ交渉

(c) 住環境の改善と資金計画

?Cモニタリング

(a) グループホームの定期検査

(b) より良い暮しへの指導

(c) 利用者アンケートの実施

?D権利擁護

(a) 利用者の家計と財産管理

(b) 契約関係(利用契約・賃貸契約などの代行)

?E福祉制度の改善対策

(a) 地域サービスの改善委員会

(b) 行政との交渉

(c) 広報

グループホームをより充実させるためには、これだけの広範囲の活動が必要だと考えます。ですから、グループホームとそのバックアップは、個人が担うのではなく、地域の全体的なシステムとして機能させなければならないのです。

 

5. おわりに

 

現在、全国で約1万人の知的障害をもつ人達がグループホームを利用するようになりましたが、その10倍以上の人が入所施設に入っています。不必要に長く入所施設に入っている人を早く普通の暮しに戻していかなければならないと思います。それには今のバックアップシステムよりも、もっと強力なプロジェクトを組み、地域生活をダイナミックに創設していかなければなりません。特に東京都は、多くの知的障害者を他の県に移住させてきたという事情があります。「いつ東京へ帰れるの?」と、待っている人が大勢いるのです。東京都では、平成9(1997)年から重度の生活寮の試みも始まりました。介護保険では、高齢者のグループホームも対象になるようです。

21世紀にはどんな障害がある人も地域で暮らせるように、いっそうの強力な活動を展開しなくてはなりません。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION